ロビンの部屋

□和菓子
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「ご主人様、これ日本の」

ロビンが得意げに見せた大きな缶のなかには、行儀よくつめられたおかきの袋が入っていた。

「注文したんです。ご主人様、お好きでしょう?」

特に大好きというわけでもないが、たまにはいいものだ。あなたはロビンのもてなしを受けることにして、緑茶を淹れるよう命じた。

急須と湯のみを盆にのせ、ロビンが戻ってきた。

「甘いのも調達しました。イタリア製ですが」

盆には、黄色い小さな芋ようかんがのっていた。アルフォンソの手作りらしい。

「きらいだったら、おれがいただきますからご安心を」

そう笑いつつ、ロビンは小さなガラステーブルに湯のみをセットする。急須にはすでに茶も湯も入っていた。

淹れ方はデリカシーに欠けたものだが、日本茶の香りはいいものだ。あなたは湯のみをかたむけ、やさしい緑の味わいを楽しんだ。

「うん。これいける」

先にひとつつまみ、ロビンがあなたにおかきを勧める。

おかきにはいろいろな種類があった。

エビ入り。ピーナツ入り。海苔巻き。青海苔入り。ウニ味。小型の草加せんべい。小型のゴマせんべい。

あなたは塩味のをひとつをとって、口に放り込んだ。

小さなおかきが砕け、頭蓋に小気味よい音が響き渡る。舌に心地よい塩味がひろがった。旨みのあるやさしい塩味だ。

熱い緑茶で流し込むと、自然とため息がもれた。

やはり、からだになじむ。からだが楽だ。

「これはイイ。こっちはおれ苦手だな。これなんだ? 赤いの」

ロビンはすでにひとつひとつ味見している。

濃い味に慣れた彼には物足りないだろう。
だが、楽しそうだった。故郷の味が、あなたの目をなごませたのを見て、よろこんでいた。

あなたは愛犬のたわいないおしゃべりを聞きながら、おかきをつまんだ。

バリバリと音をたてて咀嚼し、茶をすすっていると、どこにいるのか忘れる。
舌がやすらいでいる。茶の香りに、からだがくつろいでいる。

気づくと、ロビンがニヤニヤ笑ってみていた。

「ご主人様、うまそうに食べて――。かわいいな」

面食らって、彼を見返すと、ロビンはあわてて小皿をすすめた。

「こっちも食べてください。アルの。これね、芋なんだそうですよ。芋をマッシュしたんだって。すんごくおいしいですよ!」


   〔了〕

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