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□あなたに伝えたいことがあります
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バンは机に頬をくっつけて、教室の入り口を眺めていた。
昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴ったのは少し前のことだが、待ち人は一向に現れる気配を見せない。
「カズ、遅いなー…」
「ホントね。いつもだったらすぐ来るのに」
バンの呟きにアミが頷く。
しかし、彼にも同じクラスの友人がいない訳ではない。
そちらで話し込んでいることも考えられる。
「ねえバン、たまにはカズの教室へ行ってみない?」
もはや入り口を見るのも止めて完全に机に突っ伏したバンに、アミが声をかける。
バンはその手があったと言わんばかりに起き上がると、教室を飛び出した。
「あ、」
生徒たちで混み合う廊下を少し行ったところで、バンはカズの姿を見つけた。
声をかけようとするバンをアミが止める。
「バン、見て!」
アミが指してみせたのは、カズに声をかける一人の女子生徒だった。
手に薄いピンクがかった封筒を持っており、恥ずかしそうに俯きながらカズにそれを差し出している。
「アミ…あれはまさか…」
「おそらくラブレターというやつね」
「ら…ラブレター…」
「バン?バン、しっかりして!戻って来て!」
アミはバンの肩を掴んで揺さぶった。
「二人とも何やってるんだ?」
女子生徒との会話を終えたのか、カズがこちらにやって来る。
封筒はポケットにでも入れたのか、手にしていない。
「何でもないのよ。ね、バン」
「う、うん」
「ふーん…?…あ、そうだ、オレ今日ちょっと用事できたからさ、先にキタジマ行っててくれよ。」
「…分かった」
「なんだよ、その目」
「ちなみに、その用事って何か聞いてもいいかしら?」
「えっ…」
アミの言葉に、カズの顔色が変わる。
「べ、別に何でもいいだろ!!」
「あっ、ちょっと待ってよカズ!」
バンの声には応えることなく、カズは教室へ戻ってしまった。
「これはピンチね、バン」
アミの声とチャイムが同時にバンの耳にとどいた。
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