ブック(短)

□ある早朝のお話
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今日、キバとヒナタは久しぶりに休みが重なった。なんと1ヶ月ぶり。つまり、休みが重ならない=任務以外で会えない=お楽しみ(←)できない、という方程式が彼の中で成り立っていた。そんな矢先のビッグチャンスに浮かれまくったキバは、任務帰りにヒナタを家に誘ったのである。


キ「ヒナタごめんな、疲れてたのによー…」


ぐっすり眠っているヒナタにキバはそう呟いた。まだ完全に日が昇っていないから、寝ているのは当然なのだが。


ピンポーン♪


キバがもう一度眠りにつこうとしたとき、玄関のチャイムが鳴った。


キ「(…新聞配達のじーさんだな…ったく、こんな日に来やがって!)」


ヒナタとくっついていたいが出ないワケにもいかない。キバは渋々重い腰を上げ、そばにあったジーンズだけを履いて玄関に向かった。


キ「はーい、どちらさんで「キバー!!」


5pほど開けたところで、ドアの向こうの来客に扉をこじ開けられた。「あれ、あのじーさん、こんな怪力なのかよ?しかも何か声たけーよーな…」そんな自問自答が、キバの思考回路をぐるぐると回った。


「おっはよー、キバ!!…ってアンタ、なんて格好してんのよっ!!」


珍しく当たったキバの思考を遮ったのは、聞き慣れた女の声。無論『新聞配達のじーさん』ではなかった。


キ「お前…いの!こんな朝っぱらからなんだよ…」


い「へっへー♪ちょっとね!…あ、シカマルー!早く来なさいよっ!」


目の前に現れたのは同期のいの…と、その彼氏兼幼なじみのシカマル。めったにキバの家に来ない彼女たちがこの日に限って来るなんて…と、キバは自分の運の悪さを心底恨んだ。


シ「朝早くからわりーな。いのが、さっき買ってきた限定団子を同期の奴らに配るって言い出してよー…」


い「そー、できたてがいいと思って!4時から並んだんだから感謝しなさいよね♪あ、そうそう、ヒナタの家にも行ったんだけどさ、いなかったのよね。この時間にいないんだから、泊まりがけの任務か実家に帰ってるんだと思うけどー…アンタ何か知ってる?」


いののマシンガントークは聞き流すつもりのキバだったが、ヒナタの名前が発せられて冷や汗が流れた。


キ「し、知らねーよ。任務だと思うけどな。」


なるべく冷静な口調のキバだが、内心は焦り一色だった。


い「やっぱりそーかしらねー。…あ、そーだキバ、お団子アンタん家で食べていっていい?なーんかお腹空いちゃってさー!」


キバにとって最悪の事態であった。一番恐れていた言葉が発せられたのである。咄嗟にいのの隣にいたシカマルに目で助けを求めたが、これまた「悪い」と目で返された。


キ「(やべー!今ヒナタがいるなんてバレたら何言われるかわかったもんじゃねぇ!しかも俺、半裸だしよ!何で何も着てねぇんだ俺!…くそー…ん、待てよ、大丈夫だ!ヒナタのパンプスは靴箱に入ってるし、寝室にさえ入られなければ平気…よっしゃああ!!←)」


なんとか言いなさいよー!とキバの心情なんて知らずに騒ぐいの。近所迷惑も甚だしい。そんな彼女を一瞥して、キバは溜め息をついた。


キ「わーったよ!…でもすぐ帰れよな!俺だって暇じゃ「やったー!んじゃ、お邪魔しまーす!」


シ「…わりーなキバ。団子食ったらすぐ帰っからよ。」


じゃあここで食って今すぐ帰れ!とキバは叫びたかった。しかしそんなことを口にしたら何をされるかわかったものではない。キバはただただバレないことを祈り、先陣を切って家へと上がり込むいのの背中に溜め息をついた。





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