☆短編小説☆

□LOVEGAME
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「おい、チビ」
「ちびって言うなよ!」
「あはは、ごめんごめん」

くしゃくしゃと髪を撫でられて、僕はむくれた。
確かに。
僕は、小さい。
昔アイドルだった母親に似てしまった顔のお陰で、良く女の子に間違われる。
くりんとした二重に細い顎、少しぽってりとした唇。
男らしくないこの顔が、あまり好きじゃない。
もっと格好良かったらな、なんて鏡を見ながら何時も呟いていた。

「お前、可愛いよなぁ」
「可愛いって言うなっ」

男子校に入ったの。
やっぱり、間違いだったかもしれない。


少しでも大きくなりたい。
そう思って入部したバスケ部。
元々運動神経は悪くないし、大きな部員達の間を難なく擦り抜けるすばしこい僕はかなり重宝されている。
今日もハードな練習が終わり、片付け当番を終えた僕は一人ロッカーで汗を拭いていた。
がちゃり、と扉が開く。

「な、多岐川」

そこに居たのは、帰った筈の辻先輩だった。
一瞬身体が固まる。
逞しくて、凄く格好良くて、誰にでも優しくて。
あんな風になりたい。
そんな憧れの人。

「何ですか?」
「…あのさ」

辻先輩。
何か、変だ。

「俺、お前が好きだ」
「ふえぇっ!?」

壁に押し付けられて、僕の頭はパニック状態になる。
止めて、とか、男同士です、とか。
言う間もなく、辻先輩が唇を塞いだ。
ぴちゃぴちゃと響く音と優しいキスに、僕は頭がぼーっとなってしまう。
思わず、先輩の背中に縋りついていた。

「せ、んぱ…い…」
「我慢出来ない」

首筋に、舌が這う。
擽ったくて、僕は身体を捻って逃げようとするけど。
どう頑張ってみても、先輩の力には敵わない。

「ゃ、先輩、やめ…」

先輩の腕が、抵抗しきれない僕のシャツを脱がせる。
その時。
また扉が開いた。

「…白井先輩、塚本先輩…っっ」
「…うわ、お前ら、何やってんだよっ」

見られた。
僕は反射的に目を閉じた。

『お前ら、ホモだったのかよ』

そう先輩達に詰られる事を覚悟して。
でも、違った。

「おい、辻!抜け駆けかよ!」
「多岐川には手を出さないルールだろ!」
「…ふぇ…?」

抜け駆け?
手を出さないルール?
何、それ。

「悪い。我慢出来なくてさ…」
「先輩…?」
「俺達さ、多岐川が好きなんだ」
「だから、抜け駆け無しって決めてたんだけど」

そう言って、白井先輩は僕の髪を優しく撫でた。
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