☆短編小説☆

□痴漢と淫乱
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優也は、溜息を吐いた。
今日は寝過ごして電車を一本逃してしまったのだ。
別に、この時間の電車でも余裕で始業時間には間に合うのだが。
満員電車が、嫌いだった。
澱む空気、知らない人との接触。
それが苦手なのだ。

「あーぁ、憂鬱」

思わず、ぽつりと呟いた。


もそもそと、尻の辺りで動く気配に気が付いたのは、暫く電車が進んだ頃。
何だ、これは。
きっと気のせいだと、その時は思った。
伸び盛りの割に伸びない身長のお陰で、級友に比べて随分小柄な優也だが、決して女顔という訳ではない。
女に間違えられる筈もないのだ。
だから、気のせいだ。
混んでいる為、手が触れたのだろう。
その程度にしか思っていなかった。
しかし、その動きは次第に大胆になる。
尻を掴まれ、とうとう我慢できず、抗議する為に後ろを振り返った。
そこには。
優しそうなスーツ姿の男性が立っていた。
多分、イケメンという部類に分類されるだろう。

―――この人が!?

信じられない。

「…君、可愛いね。何時も前の電車に乗っているだろ?」
「…え?」
「気になっていたんだよね、君のこと」

言葉の意味が分からない。
茫然としている優也の股間に、男の手が触れた。

「…ちょっっ!」
「静かに。周りに気付かれちゃうよ?男に痴漢されるなんて、恥ずかしいだろ」
「…っ、っ…」

くにくに、と制服の上から股間を揉まれる。
こなれたその指使いに、腰が引けた。
耐えるしかない。
こんな事をされているなんて知られたら恥ずかしい。
もしかしたら友達も乗っているかもしれない。

『あいつ、痴漢されてたんだって』

そんな噂が立った日には、学校に行けなくなる。
優也は、頬を赤らめて俯いた。
大人しくなった事に気を良くしたのか、男の動きが更にエスカレートし始める。
ファスナーを下ろし、下着の裾から指を差し込む。

「…っ…」
「こんな所で勃起させて…厭らしいおちんちんだね」
「そ、んなっ」

優也は、愕然とした。
男の言葉の通り、ペニスはズキズキと痛みを伴う程に勃起していたのだ。
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