☆短編小説☆

□斜陽
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生物の高地先生。
今日も教科書を抱えた女の子達に囲まれている。
切れ長の青味掛かったグレーの瞳に見つめられれば、誰でもときめいてしまうだろう。
伊達眼鏡では隠しきれない、誰もが惹き付けられる魅力。
通った鼻筋、形の良い唇。
色素が薄い為か、肌は陶磁器の様に真っ白で、髪は薄く茶色掛かっている。
すらりとした、それでいて実は逞しい身体をさりげなくブランドスーツで包む。
誰もが憧れ、見惚れる程の容姿は、教師なんかよりも俳優やモデルの方が合っているんじゃないか。
スタイルが良くて格好良ければ、女生徒達が夢中になるのも無理はない。
でも、俺としては面白い筈がない。
だって、俺と高地先生は付き合っているんだから。
多分。
遠くから嫉妬の視線を送る俺に気が付いた高地先生が、薄く笑った。
ドキリ、とする。
女の子達の輪を掻き分けながら、高地先生が此方に近付いて来た。

「京極先生、今日の職員会議なんですが」
「はい」
「三年生の進路について話し合われるそうです。なので資料を用意しておくようにと、主任から伝言です」

教師としてもまだ新米で、頼りないと自覚している。
なのに今年は三年生の担任を任されているのだ。
担任発表をされた時は、酷く戸惑った。
大切な時期、俺なんかが良いのだろうか、と。

「分かりました、ありがとうこざいます」

礼を告げる俺に耳元に唇を寄せると、優しく囁いた。

「…ちゃんと、履いていますか」
「…はい」
「お利口ですね」

その声に、ずくん、とペニスが疼く。
此処で、触って貰いたい。
そんな歪んだ欲望がぐるぐると渦巻いた。

「後でたっぷり可愛がってあげますよ。会議が終わったら私の部屋へどうぞ」
「…分かりました…」

断る理由なんて、俺には見当たらなかった。
だって、俺は高地先生が好きだから。
じっと見つめる女生徒達の嫉妬混じりの視線を、背中に感じる。
モテるんだな、と改めて思い知らされた。
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