☆短編小説☆

□SとMの情事
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生物の高地先生。
背が高くって、知的でいつもクールで。
凄く格好いい。
いいとこのお坊ちゃまで、有名大学を首席で卒業した頭脳の持ち主。
高級なスーツも難なく着こなす。
同性から見ても、嫌味な程に格好よくて、嫉妬する気にもなれない。
それに比べて俺は。
平凡って言葉がしっくりくる、普通の国語教師。
なのに。
何故か、高地先生と俺は付き合っている。
と、思う。
どうして、俺なんだろう。
時々そんな風に思ってしまう。
頭脳明晰、容姿端麗、俺なんかを相手にしなくても、引く手あまただろうに。

「京極先生」
「…何ですか」
「今日はお暇ですか」
「暇ですけど」

職場では、完璧にただの同僚を装う高地先生。

「そうですか」

ふふ、と微かに笑う。
伊達眼鏡の奥には、何かを企んでいる瞳。
悔しいけど。
ドキドキするくらい、眩しいくらいに格好いい。


「高地先生。映画に行きましょう」
「…はっ?何でまた急に映画なんて…」
「単なる思い付きですよ。何時もの事です」

大体突拍子も無い事を言い出す時は決まって『イケナイ事』を考えている。
俺は、不安に駆られた。
叱られると分かっていながらも、教師の元へ行かなくてはいけない生徒の気持ちが良く分かる。
渋々ながら、俺は高地先生の後を着いて行った。


紙袋を手渡されて、トイレの個室へと押し込まれた。

「それを履いて下さい」
「…え…」

扉越しに声を掛けられ、可愛くラッピングされた袋を開ければ。
中に入っていたのは、女性物の下着だった。
これを、履けって?
広げると、それはたっぷりとしたレースに包まれた白いタンガ。

「ゃ、無理ですよ…」
「私の命令が聞けないんですか。履きなさい」
「…そん、な」

彼の命令は、絶対。
仕方なくトイレの個室で下半身を晒し、厭らしい下着を身に付ける。
小さな布地は、当然全てを隠してくれる筈もなかった。
みっともなくはみ出た陰毛やら双球やらを見ていると、情けなくなる。
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