宝物

□歪音アリス様より小説
【Love is bling】
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キーンコーン
  カーンコーン


エン「ふぁ…もうそろそろ、かな?」
小さな欠伸を伸びと共に一つ。
両手を一杯に広げて新鮮な空気を肺に送り込む。
目の前に広がるのは限りなく青い空。


太陽の光が当たらない物陰で寝転がる。


ここが僕の定位置。


チャイム音がやたら大きく聞こえるのは、ここが屋上だから。

グラウンドを見下ろすと規則正しく並んでいた生徒達が歪みをつくり一斉に散らばった。

4時限目の終わりを告げるソレを聴いて、また欠伸が漏れる。
そろそろ来る。きっと、ね。


エド「おいこらエンヴィー!どこにいる!!」

ガシャン。と、乱暴な扉の開け方に乱暴な口調。
少し怒気を含んだ声を他人事のようにのんびりと聞いた。
ほらね、やっぱり来た。
予想が当たって、思わず笑みが零れた。


心地よい風が髪を撫で乱していく。

不思議と嫌な気分にはならなかった。

エド「おーい、出てこい馬鹿エンヴィー!って……まさかとは思ったがまたここに居たのか」

ヒョイ、と明るい金色が視界に入り込んでくる。
ソレが太陽に反射して眩しく光った。

反射的に目が細まる。

はぁと大げさにため息をついて隣に腰掛ける風紀委員のクラスメイト。
良く知ったヤツ。

エン「あららー、見つかっちゃったぁ?」


クスと笑って挑発的な目で見上げると、いつもと同じ質問が降ってくる。

エド「…なんで教室に来ねェんだよ」


エン「なんでそんなこと知りたいのさ」


エド「別に知りたい訳じゃねェよ。あと質問を質問で返すな」


はいはい、訳わかんないヤツ。と呟いてまた笑った。

こうして他愛もないことでいいから話していたい

と思うのは何でだろう。
この時間が好きなんだ。すごく心地良いから。

エド「で、何で来ねェんだよ」

いつもと同じ会話。
だから今日は、違う返事をしてみようかな。

エン「何でだと思う?」

いつもと違う返答に一瞬戸惑う表情。


その顔を薄ら笑いを浮かべながらじっと見つめて返事を待った。

どうせおチビさんには分からないよ。
きっと誰にも分からない。
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