拍手・捧げ小説
□僕のもう一人の兄さん
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僕と兄さんはこちらの世界へ戻ってきた。
僕はこちらの世界へくるのは初めてで、なにもかもが信じられなかった。
こちらの世界へきて三日が過ぎ、明日はハイデリヒさんの葬儀だった。
「…兄さん明日のことだけど…。……!」
兄さんとハイデリヒさんが暮らしていた家に戻り、僕は兄さんの部屋に入ろうとした。
でも……
「……っ…」
兄さんは泣いていた…。
「……っ…アル…フォンス……っ」
僕の声に兄さんは気付くことなく…兄さんは泣いていた。
ハイデリヒさんの死には、一番兄さんがショックを受けていた。
背中に銃弾が当たりノーアさんが駆け付けた時にはもう息を引き取っていたらしい。
兄さんは…ハイデリヒさんと一緒に暮らしていた…ずっと一緒にいて、兄さんをロケットに乗せてくれたのもハイデリヒさんだった。
「………兄さん…」
兄さんと再会したとき…兄さんの背中が大きく感じた…。
でも何故だろう…今僕の目の前にいる兄さんの背中は…とても小さくみえた。
「…兄さん」
「…アル……」
部屋に入り肩を叩くと、兄さんは顔を上げた。
頬を濡らして…泣いている兄さんをみるのは久しぶりだった。
「…大丈夫…?」
「……あぁ…ごめん」
兄さんは涙を拭いて、軽く笑った。
その仕草さえ…昔と変わらない。
「…で…どうしたんだ?」
「…ん…明日のハイデリヒさんの葬儀のことなんだけど…」
僕はベッドに座り、椅子に座っている兄さんをみてそういうと、兄さんはまた顔を俯けた。
「明日の葬儀…僕も行ってもいいかな…?」
「…え…?」
僕がそういうと、兄さんは驚いた顔で僕をみていた。
「……僕も行きたいんだ……ハイデリヒさんとは話したことはないけど…兄さんがお世話になった人だしね…」
「…そっか…」
僕が微笑みいうと、兄さんは少しだけ嬉しそうに笑った。
「ハイデリヒさんとは話せなかったけどさ……関係ないって気がしないんだ…。
…ずっと前から……会ったことがあるような…不思議な感じ………」
「………」
「僕と兄さんがこうして再会できたのも、ハイデリヒさんのお陰なんだから…」
「…アル……」
きっと…ハイデリヒさんがいなかったら…僕たちは再会出来なかったのかもしれない…。
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