拾われウサギ お話
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「待たせてすまなかったな」
部屋に入ってすぐ、阿伏兎がお侍さんに言った。お侍さんは立ち上がって首を振る。
「いや、拙者の事は気にせず。河上万斉でござる」
「!!(“拙者”と“ござる”って言ったよ?!)」
「(はいはい、よかったねー)」
「・・・で、今回はどういった件で春雨に?」
小声のやり取りを終えると、適当に自己紹介をしてから阿伏兎が話を切り出した。
「近く、我ら鬼兵隊の邪魔となるであろう者たちに戦を仕掛けるつもりでいる。主らにはそれに加わってほしい」
「つまり加勢しろと」
「簡潔に言えば」
「・・・・戦は嫌だなぁ」
その言葉でお侍さんがこっちをむいた。
小さく言ったつもりだったけど、聞こえてた?
「主は春雨の・・・夜兎ではないのか?」
「うん、そうだよ」
「ならば何故戦を嫌う?夜兎は戦いを求める戦闘種族であろう」
「んー・・・意味のない戦いは嫌いなの」
「アリスは変わってるから。でも強さは保障するよ。16で俺の補佐だからね」
「主が・・・神威殿の補佐役を?」
「そうだけど・・・どうして?」
「いや、腕が立つと聞いていた補佐役が主のような女子とは思っていなかったのだ。これは失礼した」
・・神威は“春雨の雷槍”で知られてるし、そんな団長を補佐するのが私って、初めての人は驚くか。
私が補佐に任命されたのは16になった時で、そんなに時間経ってないから詳しく知らないのは当然かも。
「いえ。仕事はちゃんとするので安心してください」
「・・では、交渉成立という事でござるか」
「あぁ」
「加勢は第七師団が?」
お侍さんの言葉に阿伏兎がうなった。
「俺らも忙しいからなぁ・・・第七師団は無理だろう。
他の団が行くことになるが、アリスも同行する。まぁ大丈夫だろう」
「よろしくね、河上さん」
「よろしくでござる」
「地球で仕事って事だよね?」
「そうでござる。出発は明日の正午。不都合は?」
「ない!」
話に決着がついたので、私たちは軽い挨拶をしてから部屋を出た。
【たいへんだ】
「早く準備しなくちゃ!」
「・・アリス」
「何?神威」
「変な男についてかないようにね」
「うん」
「それと、お土産は地球のご飯ね」
―結局ご飯に走る―