◎book
□すーぱーまん
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※注意※テンゾウがちょっとろくでなし
彼女の泣き顔を見たら、
ツンと胸の奥が痛んだ。
(おかしいな)
(おかしいな、)
望んだのは僕のはずなのに。
*すーぱーまん
「ねぇ、ドアが壊れちゃったの!
テンゾウ直してっ」
うららかな午後。
いつものように、君はやってきて
いつものように、僕は知らないふりをして君に笑顔を向ける。
誰が君の家を破壊してるのか
日に日に増えていく身体の痣は何故なのか
ただただ知らないふりをする。
「ありがとーテンゾウ!
テンゾウの能力ってほんと便利っ」
「まったく、これで何回めだと思ってるんだい?
今度からは気を付けるんだよ」
「うん、そーするー
テンゾウはあたしのスーパーマンだねっ」
彼女は無邪気に笑う。
僕が何も知らないと信じこんで。
僕がスーパーマンだって?
とんだ検討違いだ。
スーパーマンはね、困ってるひとがいたら助けてくれるもんなんだよ。
***
恋しいなんて思ったのが間違いだった。
彼女にはとっくのとうに大切な人がいた。
彼女も彼を恋しいと思ったのが間違いだった。
彼は心の一部が欠如してる。
平気で最愛の人に暴力をふるう。
『やめてぇぇえ!!』
悲鳴にも似た声を、彼女は叫ぶ。
涙が混じった嗚咽を、彼女は漏らす。
僕はそれに対してただの傍観者だ。
そして翌日、家を直してと彼女は僕のもとにやってくる。
僕はなにも知らないふりをして家を直す。
ずっとそれの繰り返しだ。
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