橙の風

□肆
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「さすけ、」
「……此処に」

若の呼び声に、素早く後ろに跪く。
今までと同じ様で、今までと全く違う、不思議な距離感だった。


――池田殿が謀反を翻したあの日から、三日。
そう、三日も経ったのだ、あの日から。






「佐助……?」
「…さすけ?ど、どうしたのだ!?傷がいたむのか!?」

昌幸様の唖然とした様な声と、若の焦りと戸惑いの混じった声が聴こえた。

だが其れ以上にどくんどくん、と心の臓が早鐘を打つ音が頭に響く。
隣で心配そうに眉を顰める筧殿が何か言っているのに、肝心の其の声が聴こえない。


心臓の音が、全ての音を遮断する。


「さすけ!」
「…わか、さま……」

そんな中、小さな小さな主の声だけは…
何故かすんなりと耳の中へと滑り込んできたのだ。


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