橙の風
□零
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生きる為には何だってした。
女であることを利用したことだってある
だが、そんなことをするたび、胸の辺りに、何かぽっかりと大きな穴が空いている気がしてならなかった。
何をしても、それは塞がることはなく、徐々に徐々に広がっていった
貧しいながらに、親子が幸せそうに笑いあっているのを見ると自然と涙が頬を伝うようになった。
少女は、 《愛》 を知らない。
異性を思う愛も、親が子を思う愛も、何も少女は知らなかった。
少女は、誰からも愛されたことがない
いつからだろうか――
少女は、死を望むようになった。
死を求め、戦の中に飛び込んでも、身体は生にしがみつこうと相手を切り捨てていった。
だが、ようやく死にたどり着いたのだ
「嗚呼、死、とは…こんなにも、苦しいもの、なのだな」
ただ一人、深い深い森の中で私は死ぬ。
当然のことながら、私を看取る者などいない。
一人には、独りには馴れたはずなのに、それが無性に苦しくて哀しくて
頬を、涙が一筋流れた。
「もし……もしも、来世があるのなら、」
私は 《愛》 を、知りたいと思う。
少女――享年十歳
名を持たぬ、孤独な孤独な少女であった