曼珠沙華

□序章
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時は戦国――

日々天下を得る為に、数多の武将が戦場を駆けた。


「敵将、討ち取ったり!」


そんな猛者達の中、美しい漆黒の長い髪をたなびかせ戦場を駆け抜ける小柄な女子。

屍で埋まる修羅の地にて、朱き鎧を纏い、その可憐な容姿とは裏腹に情け容赦なく敵を討つ。
彼女を包む紅蓮の炎は、立ちはだかるもの全てを無に帰していった。

その姿、まるで鬼神。
しかしまた同時に、この修羅に鮮やかな華を思い出させる可憐な朱。


「曼珠沙華…」


そう、まるで死人花の様に。
敵を死に追いやる猛毒の如く。

だが、何ものにも染まる事のない白。
戦場にいながらにして、何処か優しげな、柔らかい猛毒。


敵には死を。
味方には勇気と活力を。


「この戦、我が武田軍の勝利だ!」

戦場に高らかに響く女人特有の高い声に、味方の兵士が雄叫びを上げた。

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