Belial
□第三話
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TVなどで有名な池袋西口公園で、人々の視線を集める一人の女性がいた。
風に揺れるダークブラウンの髪を抑える彼女は、テレビに出て来る女優達の様に―否、それ以上に―美しかった。
平日の昼間の公園は実に閑散としており、人混みを余り好まない衣弦にとっては快適な空間と化していた。
衣弦の幼馴染みである青年に言われた待ち合わせ場所はここから少し離れているが、彼は実に衣弦の事を解っていた。
見える位置にある本来の待ち合わせ場所も、閑散としており、彼女は内心で微笑んだ。
「…ちょっと早く着いちゃったな」
苦笑しつつも、何処か柔らかい雰囲気を醸し出す衣弦に、また視線が集まった。
正臣は同年代の人間がいないからと、昼休みを利用して外に出てきているOLなどに声をかけている。
当然ながら高校生にナンパされて承諾する社会人(しかも昼休み中)はおらず、無駄な行動にいそしんでいる正臣の姿が哀愁を誘う。
やがて帝人の元に戻ってきた正臣にそれを告げると、正臣は笑いながらこう答えた。
「ええ?何言ってんの、話しかけるの自体が目的なんだからいいんだよ!」
けらけらと笑う正臣に、呆れた様な帝人。
「それにお前、『無理』『無駄』は女の子を誘う時に一番言っちゃいけない言葉だぞ!美女を目の前にして、自分には無理だと思うから無理なんだ、無駄だと思うことが無駄なんだよ、解るか?」
「さっぱり解らない」
呆れた声で呟きながら、帝人は大きく伸びをした。