Belial
□序章
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プルル、プルル…
電話の呼出し音を耳で聞きながら、相手が出るのを今か今かと待つ。
きっと、この電話が繋がる事はないだろう。繋がるのは酷く稀な事だ
“彼女”は、俺からの電話になかなか出てくれない。
『――…何』
今日、何度目か分からない電話に、ようやく彼女が出てくれた。
今まで耳に響いていた機械的な呼出し音から、高くも低くもない、聞きたくて堪らなかった声が耳に響く。
たとえその声が不機嫌そうなものだとしても気にしない。
重要なのは、彼女が電話に出たという事実だけだ
「遅いよ。もっと早く出てくれないと」
『嫌。何の用?用がないなら切る』
高ぶる気持ちを押さえながら彼女に言葉を返せばすぐに声が返ってくる。
不機嫌そうなのを隠そうともしない彼女にくつりと笑みを零す。
「衣弦の声が聞きたいなって――」
『ブツッ…ツーツーツー』
相手には見えていないと分かっていても、思わず笑顔で言えば、言い切る前に切られた電話。
また、くつりと笑みを零せば、笑いが止まらなくなった。
「ふ、は、はははははっ!楽しいなあ、衣弦をからかうのは」
俺は人間が好きだ。愛してる。
でも、その中で“特別”になりえた存在の彼女はそんな言葉じゃ表しきれないほど、
愛してる。
どんな手を使っても、俺は必ず手に入れてみせる