暖かい水の中

□第四章
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片付けをしていた科学班や整備班達が、入ってきた二人を目に留めた後、さっと目を逸らした。

「コムイ、これ何」
「何をすればこんな状況になる」

沸点の低い神田はともかく、滅多に怒ることのないアニエスが目に見えて不機嫌だ。

そんな二人の絶対零度の眼差しに、コムイは半泣きになりながら片付ける手を動かし続ける。


「態とじゃないんだよぅー!」
『当たり前だ』

悲痛な顔になったコムイに報告書を思い切り投げ付け踵を返す。

出る時に感じた科学班達の視線は全て無視した。
まるで手伝ってと言わんばかりの視線だったが任務を立て続けにやった後では何をする気にもなれなかった。

アニエスも神田も、任務の後でなくとも手伝うことはないだろうが。


さっさと司令室を出て自室へ向かう二人が、部屋への最後の角を曲がる。
奥まったところに部屋があったのが幸いしたのか、部屋は無事だった。

神田の部屋より三つ手前にあるアニエスの部屋に先に着き、入ろうと扉を開けたアニエスはすぐに扉を閉めた。

「…なんで入らねぇんだよ」
「……誰かいた」

部屋に入らないアニエスを不思議そうに見る神田に、アニエスは少し目を見開かせて呟いた。
扉から少し離れて部屋を確認するが、間違いなくこの部屋はアニエスの部屋だ。

「……僕の部屋、だよね」
「ああ、お前の部屋だな」

神田も部屋の位置を確認し、眉間に皺を寄せる。

見間違い、というのもないだろう。
アニエスの部屋は殺風景という言葉がぴったりな、本当に何もないような部屋だ。
置いてあるのは備え付けのベッドに武器をしまう為の小さめの棚。
あとあるものと言っても服くらいだ。
そんな中で見間違えることはまずない筈だ。
 
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