暖かい水の中

□第四章
1ページ/13ページ





「…イノセンス、回収完了」

アクマの残骸が広がる荒野で、アニエスは手の中にある小さな結晶を見てぽつりと呟いた。





マテールから直接向かった次の任務を終え、同時期に任務が終わったという神田と共にアニエスは教団へと戻った。

電車の中で合流し、行きにも乗ったであろう、しかし行きより些か傷の目立つ小舟に乗り込む。
地下水路について、階段に向かおうと顔を上げたアニエスはそこでぴたりと動きを止めた。


「……アニエス、止まるな。邪魔だ」
「ユウ……階段が壊れてる」

舟を下りようと立った自分の目の前でいきなり動きを止めたアニエスに、眉を潜めた神田はアニエスの言葉に前方を見た。


「…壊れた、っていうレベルじゃねえだろ」

更に眉を潜めた神田は、無惨な姿の階段を見て呟いた。
まるで抉られたかのような巨大な穴に、無造作に積まれた瓦礫。


「…敵?」
「それならどんな状況だろうとゴーレムに連絡が入る。……コムイだろ」

神田の言葉にそれもそうかと頷くアニエスの脳裏にへらりと笑う上司の顔を思い浮かべる。
コムイならやりかねない、と納得して。


「…部屋、大丈夫かな」
「壊れてたら六幻の錆にしてやる」

普通なら移動が困難であろう瓦礫を悠々と登りながら会話をする二人は無事司令室に辿り着いた。

司令室に来るまでの道も酷かったが、一番被害が大きいのはここのようだ。
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ