暖かい水の中
□序章
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“私”の目の前で嘲笑を漏らす異形のソレ。
“私”達の敵であり、世界を破滅へと導こうとするもの。
『………あーあ、これまで、かしら、ね』
荒い息を必死に押さえて、目の前の異形を睨みつける。
片手で押さえる脇腹から、どくどくと身体から流れ出る赤い朱い鮮血。
身体が段々と寒くなってきて、感じる事。
“私”はもうすぐ、死ぬ。
流れ出る鮮血と共に、命の流れるこの感覚。
出来る事なら、一生感じたくなかった感覚。
『は、っ…ふふ、ただで、死んでた、まるもんですか……』
『あは、悪足掻きは止めときなよう』
目の前の忌むべき異形の敵、アクマに自分のイノセンスを向ける。
その時聞こえてきた幼い少女の声に、眉をひそめた。
声のするほうへ動かない身体を叱咤して顔を向ける。
そこにいたのは、聞こえてきた声と同じくらいの幼い、この戦場には似つかわしくない、少女。