橙の風

□参
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―――視界を埋める赤、あか、アカ。

眼下に崩れ落ちる池田様に、返り血を浴びる俺。
そして、そんな俺を見て、目を見開かせる若。


嗚呼…此れで、若は俺を恐れるだろう。

血の付いたクナイを振り血を払う。
ぴくぴくと痙攣を続ける池田様の身体、切り裂いた頸部から、痙攣する度に血が吹き出した。


未だ呆然と動かない若を一瞥し、左肩に手を置く。

若の言葉に出来た一瞬の硬直。
直ぐにクナイで頸部を斬り付けたが、流石、と言うのか。

互いに出来た一瞬の隙。
俺に斬られる直前、懐刀を投げ付けてきたのだ。
咄嗟の行動であろうに、確実に俺の頭を狙ってきた懐刀。


避けきれなかった刀が左肩を掠り、微かに血が滲む。

腕が鈍ったかもしれない。
あれくらいの動きの刀、避けきれない事などなかったというのに…


「…若様、御怪我は」
「、さ、すけ…いや、大事ないでござる…」

若の前に跪き様子を伺う。
まだ呆然としていた若は、俺に気付くとほっと安心した様に強張っていた表情が緩んだ。

流石に若に危害を加える事はなかったようで若に怪我は見当たらない。
返り血を多く浴びているが、其処に若の血は見受けられなかった。


大丈夫そうだな、と思った直後。
俺を見て、若はさっと顔を青くさせた。
 
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