最強乙女は隠居中。
□第0進
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「これで最後!"サイコキネシス"!」
「ああっ!サーナイト…!」
フィールドには二匹のサーナイト。
凛としたまっすぐな瞳でフィールドに立っている方はチャレンジャーの、フィールドに伏しているもう一匹はチャンピオンであるカルネの。
最近発見されたばかりの"メガ進化"をしたチャンピオンのサーナイトに対し、チャレンジャーはそのままのサーナイトで殆どダメージを受けず相手を破ってみせたのだ。
がっくりと膝をつき、力尽きてしまったポケモンに駆け寄るカルネを見つめながら、チャレンジャーである少女は駆け寄ってきた自分のサーナイトを抱き寄せる。
「ありがとう、碧」
そう少女に声をかけられたサーナイトは、ふわりと大人っぽく微笑んでみせた。
そんな一人と一匹にチャンピオン・カルネがゆっくり近付く。
力尽きたポケモンはもうボールに戻したらしい彼女は流石といわざるを得ない女優スマイルを浮かべた。
「圧巻だわ…。あなた強いのね。すごく楽しかった。ありがとう。………そして、おめでとう。次期ポケモンリーグチャンピオンは、あなたよ」
ポケモンリーグの静かな頂で彼女の澄んだ声はよく響く。
敗者であるはずのその声はどこか吹っ切れたようなものであった。
しかしそんな彼女を裏切るかのように、チャレンジャーである少女はゆるゆると首を振った。
その仕草にカルネは首をかしげる。
「…私は、貴方のようにここに在り続けて、誰かの目標になることは出来ない。そんな資格は私にはない。…勝ったくせに迷惑だと思うかも知れないけれど、私達の目標は王座に座り続けることじゃない。貴方に勝つことだった。だから、チャンピオンは辞退します」
結局、少女はチャンピオンの座を受け取ることなくリーグを後にした。
そうして、サーナイト一匹でチャンピオンを討ち取った最強少女は、確かな伝説を残し、消息を絶った。
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