たとえ身分は違えども・・・
□第2章
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今日は、原型で寝てみた。
擬人化してる時より体が軽いし、何より動きやすい。
まぁ、体が小さいからなのだが。
ふと目を開けると、僕を包み込む優しい手が目に入った。
輝のものだと思うと恥ずかしくて、でも暖かくて。
素直になれない自分がもどかしい。
そんな風に思っていると、隣でモゾモゾと輝が動き始めた。
起きたのか・・・。
まだ中途半端に夢心地な状態の僕は目を瞑ったまま、そう思った。・・・途端。
『うひゃあっ?!』
尻尾を掴まれた。(ていうか、触られた?)
・・・誰にって?
そりゃあもう、隣でうごめいてた輝に。
びくっと体が反応し、バッと体を起こす。
「おっはー蓮♪今日も可愛いな☆」
僕はその日、本気で輝に殺意を覚えた。
――――――――。
「いてて・・・悪かったって。だってあまりにも蓮が可愛くてつい・・・」
「それ以上言ったら、本気で殺すよ?この家吹っ飛ばすよ?」
「ごめんてー」
ニヨニヨと不気味な笑みを浮かべながらそう言う輝。
あの後、殺意が芽生えた僕はおうふくビンタを食らわせてやった(尻尾で)。
あ、気付いたことが一つ。
擬人化をしたら便利なことに、耳と尻尾がしまえるようになった。
出したままも出来るけど、何より重いし邪魔だからあんまり出しておかないかな。
「なぁなぁー。擬人化したままで尻尾と耳出してよー♪」
「嫌だ。ぜーったい嫌」
「頼むよー。なぁなぁー」
ぐわしっと服の裾を掴んで放さない輝をもう一発グーでぶん殴ってやった。
「やらないっつったらやんない!」
「絶対可愛いのにー」
大きなタンコブを頭に作り、それでも粘る輝。
「可愛くないっ!そもそも可愛くなんてなりたくないし」
僕はドアノブを回し、部屋を出ようとする。
「君に女々しいところなんて見せられるわけないでしょ」
「うぅ・・・俺男なのにー。ちょっとくらい甘えてくれたっていいじゃん」
「僕はポケモンなの。自分の身は自分で守る!」
部屋から一歩踏み出して、背中を向けていた輝に振り返る。
「ほら、早く来なよ。朝ごはん食べないの?」
「!!・・・蓮、作ってくれる?!俺への愛がたっぷりの朝ごはん!」
急に立ち直り、近くまで寄ってくる輝に溜息を吐きながら言う。
「愛は入れないけど、しょうがないね。・・・今回だけだよ。僕料理苦手だから」
「おう!有難う蓮!愛してるぅ!!」
抱き付いて来ようとする輝を一蹴り。
気絶した輝をそのまま引き摺ってダイニングまで向かった。
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