短編

□恋愛感情
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   恋愛論―恋愛拒絶症少年―

 恋愛なんてくだらない。
 そんな生温い発想、俺にとっては不愉快で不可解で不合理で不条理にしかならない。

 好き、愛してる、恋しい、愛しい。そんな単純な言葉で何故人の心は動くのだろう。何故人はそれを言うだけに戸惑い、苦悩するのだろうか。俺にはそれが不思議でならない。
 解明の出来ない無駄に難解で矛盾したアルゴリズム。
 好きです、そうですか。それで何が言いたい?何を求めている?要求するものはなんだ?好き、それがどうした。それだけだろう。
 質量の無い言葉でそんな事言ったって人に想いなんて微塵にも伝わらりません。
 証明してくれないと理解できません。言葉や行動でなんか証明できない。証明の仕方なんて存在しない。
 恋は心拍数が上がり苦しくなる、それならその胸を切り裂いて心臓を見ればそこに恋愛があるのか?
 心は頭にある、それならその脳髄をぶち抜けばそこに恋愛があるのか?無いだろう。
 証明なんて出来ないじゃないか。
 
 科学的に判明されていない事は信じない主義なんです。
 だから俺は幽霊を信じない。見えないものは何一つとして信じない。
 故に恋愛など信じられない。
 
 確かに俺にも好きという感情はある。チョコレートは美味しい。故に好き。このシャープペンシルは使いやすい。だから好き。
 だがこれは英語で言うlikeの意味でloveの意味ではない。これは恋愛ではない。
 恋という感情も愛という感情もない。恋情も愛情も目には見えない。
 全く、世の中どうにかしている。恋愛という名の架空の物に心を奪われ、妄想に耽り、揚句の果てにお付き合いだの結婚だの。
 馬鹿馬鹿しい。
 自己満足のためだろう。違うか?独りで死ぬのは嫌?俺はそうとは思わない。どちらかというと、独りの方が気楽で楽しいと思う。
 恋愛なんてするだけ損。告白、振られる、泣く。その繰り返しだ。
 それならいっそ恋愛感情なんて持たない方が良いのではないか。
 相手への思いを告げる告白は一方的なものだ。もしかすると相手は友達という友情のある友好関係を続けていきたいだけなのかもしれない。それを一瞬で粉々に砕く。砕いたものは戻らない。
 これまでの様に友達でいようね、なんて口先だけで、絶対出来ないことなのである。馬鹿みたいに意識してついには話さなくなる。友情なんて儚いものだ。恋愛という感情で玉砕されるなんて、本当に阿呆らしい。
 相手に不適切な言葉なんて言わない方が良い。その前に相手に不適切な感情なんて持たない方が良い。友愛、博愛、自愛、慈愛、求愛、敬愛、最愛、等、愛にも色々ある。全ては自己責任の中の自己満足で、人間関係を破壊するにも、崩壊させるにも、作成するにも、創造するにも、粛清するにも、利用できる事である。偽りの関係を簡単に創り出す。
 それが愛である。それに恋なんて夢物語を付け足すと、ああ不思議。恋焦がれているという幻想の中に愛しているという妄想がある。
 恋愛について得意気に話す人間の妄言はもう聞き飽きた。

 恋愛とは何だろう。一体、何なのだろう。特別恋焦がれ、愛しているものとは何だろう。
 愛故に何だろう。恋故に、何だろう。何が在るのだろう。何が存在するのだろう。目には見えない。見えるはずが無い。見えてはいけないのだろうか。でも存在を主張するのは何故だろうか。
 そんな疑問が俺を動かす。
 証明する為に必要な仮定とは一体どんなものだろうか。いつかは崩れ落ちる感情を何故人は追うのだろうか。必要とするのだろうか。
 どんな形をしているのだろうか。どんな感触がするのだろうか。どんな色なのだろうか。俺はそう考え、でも結局は科学で証明できない、故に存在しないという捻くれた結論へと漕ぎついてしまうのだ。
 最悪な思考回路だと自覚している。でも、それが正しいという確信をしている。皮肉にも、理論的で論理的。矛盾した中での否定。結局は死んで無くなってしまう人間。その全てを否定しようとは思わない。
 ただ、恋愛という感情を否定するのだ。悪い事なんて一つも無い。自分をただ信じ続けているのだ。悪質などではない。悪役などではない。でも、愛を信じて戦う勇者でもない。魔王でもない。悪魔でもない。神でもない。天使でもない。俺もただの人間であり、無力に等しい人間である。その中で恋愛を否定して藻掻いている。
 そんな俺を人は滑稽な人間というが、俺は自分を信じているが故に周りが滑稽に見える。
 俺は正しい。俺は間違っていない。俺が真実だ。故に恋愛など幻想で妄想で空想だ。
 
 俺は、そう無邪気に言って彼女を振った。

恋愛論―恋愛拒絶症少年―/殴り書き@薄雲

20110322
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