短編

□poem&story1
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ボロボロプリンス

ボロボロな衣服を身に纏った王子様。
白馬なんて泥だらけ。
髪もぐちゃぐちゃ。
でも、
私が愛したのは彼だけ。
ボロボロ王子様
(見た目なんてどうでも良いじゃない!)


20101214




教室の隅のほうで椅子の上に体操座りをしている彼女は俺に気付かない。何を考えているのだろうか。まあ、そんな事どうでも良い、と言いたいところだが、そうはいかない。だって彼女は俺の隣人なのだから。
「何、考えてるんだ?」
「ねえ」
別れよっか
(唐突なんだよ)

20101214




彼女の我侭ドライブ
チョコレートの甘苦い香りを漂わせて、パキリという音をたる彼女は助手席に座っていた。ほのかに漂うチョコレートの香りに惑わされないように俺は運転を続ける。


20101215




夢は海賊の頂点に君臨する事

「やっぱりブルーベリーチーズケーキを食べる事より大切な事って有ったのね」
彼女はいつも唐突的である。
「そりゃそうだろ。ていうかおまえ、ブルーベリーチーズケーキ食べる事以上に大切な事って無かったのか?」
彼女は甲板で風を受けながらブルーベリーチーズケーキを乗せた皿片手に俺に言った。
「ねえ」
「なんだよ」
「おかわり無いの?」
呆れる。
「それがこの船に乗せてた最後のブルーベリーとチーズ」
「そう…」
つまらなそうな顔で言った。
「御前さっきブルーベリーチーズケーキより大切な事有るって言ってなかった?それって何?」
スプーンを口にくわえたままこちらを見る。
「何だと思う?」
軽々しい口調で問う。
「知るかっ」
ニッコリと笑う。
「貴方が海賊王に早くなる事」
「おう、そうだな」
銀のスプーンを手に持つと自室に戻ろうとする。階段を降りる前にもう一度こちらに振り返る。
「そして私の夢、ブルーベリーチーズケーキをお腹いっぱい食べさせてね」
「そこかよ」
入道雲の浮かぶ空を見上げて笑った。

20101217




まさかこんな状況に立たされるとは思いもしなかった。
今まではお菓子の家の中にでも居た様な気分だった。舞い上がった気持ちを抑えつつ、ゆっくりと壁のクッキーを剥ぎ取る。さあ、食べよう、という時に頭に衝撃が走る。痛みのあまり起き上がると、目の前には黒板様コンパスを片手に「起きろ」と言っている男が居た。魔法使いは男の人かと思い、まじまじと彼を見る。そこでやっと気付く。
「私、寝てた?」
男は、某先生だった。
「廊下に立つか?」
そんな古風な事する奴いるの?
クッキー食べたかったな。
(夢の中でも食い物か)


20101217



彼女が僕に対して初めて口にした言葉はあいさつでも自己紹介でもなかった。
一つの質問だった。その質問とは授業の質問でも、委員会の質問でもなく、耳を疑う様な質問だった。
「貴方は人間ですか?ニンゲンですか?」
文章だと漢字と片仮名で分けられるが口から出る言葉だと同じ事を二度尋ねられている様に聞こえる。彼女の真剣な眼差しに少々戸惑いつつ笑ってその場を去ろうとした。だが、彼女は僕に無理矢理紙を渡してきた。
「読めば分かる、貴方には」
紙を恐る恐る開く。達筆な字でこう書いてある。『新人類』僕はそれを制服のポケットの中に入れるともう一度彼女を見た。長い髪を一つに束ねた彼女は壮麗と去って行った。僕は一人、教室に残された。
放課後のグラウンドから聞こえる運動部の人々の掛け声はその時僕の耳に入らなかった。その後、僕の脳内プログラムを立ち上げるのには少し時間がかかった。『新人類』何の事だ…。考えれば考える程沢山の考えが浮かぶ。
僕の思考回路はよく可笑しいと言われる。皆、僕を避けて行く。だから友達なんていない。仲間もいない。友達の基準を知らない。どこからどこまでが友達で、どこからどこまでが友達じゃないか理解できない。僕の思考回路が可笑しい為か、同じ考えを持つものもいない。同じ目的を持つものもいない。だから仲間がいなかった。僕は、彼女の言葉の理解に酷く苦しんだ。今迄、同じ思考を持つ者がいなかった。
だから彼女が僕の考えと異なる思考を持って、この言葉を記したのかと気になった。僕の考えは、新人類とは僕達の事。僕達は外見は他の奴らと変わらない人間だが、中身は違うという事ではないのか。
結局、答えの解らぬまま次の日がきてしまった。教室は騒がしい。僕は椅子に座り本を読んでいた。すると彼女が話しかけてきた。驚きはしない。答えを訊きに来たのだろう。
「おはよう、意味、解った?」
「その前にこっちが質問しても良い?」彼女は頷いた。「僕の思考回路は可笑しいと思う?」
彼女は笑って言う。
「素敵よ。とても」初めて言われた。
「じゃあ君も僕と同じ考えを持っているの?」
「ええ、そうよ」
「同じ考えを持っている、と言う事は仲間だね」
「ええ、その通りよ」
「君がしたい事は何?」
一瞬黙った。顔には笑みを浮かべたままだった。
「世界征服ってところかしら」
「テロ?良い考えだね。良いよ、暇してたところだったんだよ」二人はクスリと笑うとそのまま教室を飛び出した。 

20101218
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