例文アナザー
□第五章:調査
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「近辺調査って言ってもどこから探すんだ?かなり広範囲だろ?」
広大な面積と人員を誇る軍事施設の様な蓮篠学園。
初等科から大学院まで、一学年約200人。
この少子高齢化社会の時代に良くこれだけの人数が集ると驚く。
編入試験有り、落第有り。
落第した者がその後どうなったかは全くと言って良いほど解らない。
この学園、外から見れば優秀有能な金持ちが行く憎ったらしい学園。
序でに言ってしまうと、脳みその出来の良い人間は学費免除。
入学のテストは至って簡単。
面接だけだ。
ただその面接で認められないと入学不可能。
所謂異常な人間の集り。
通常ではない尋常じゃないくらいの異常。
その異常な人間の中から犯人を搾り出すほど難しい事は無い。
ああ、俺?俺は至って普通の男子高生だけど、何か。
「いや、初君もアブノーマルだよ。私以上の」
衝撃的な一言だ。
「まあそれは良いからさっさと話進めようぜ?」
「さらっと流しやがって。まあとりあえずだな、お前、携帯電話貸せよ。私の個人情報入力してやる」
「生憎パソコン派なんで」
華崎は「は?」と一瞬呆気に取られた後仕様が無いなと頭をかいた。
その後イヤホンと音楽プレイヤーみたいな物をポケットから俺に投げた。
「ほら。これ持っとけ。連絡手段な」
「良いのか?」
「良いのかも何もそれが無いと団体行動できないだろ?それには私と若山のメールアドレスと電話番号が入ってる。イヤホンは常時耳に突っ込んどけよ。それからしか鳴らない仕組みだからな」
「華崎と若山先輩の個人情報か」
そう言って中身を確認する。
確かにそうみたいだ。
「それじゃ」
華崎はガラリと一年七組の教室の扉を開けた。
「私はちょっと調べ事が有るから近辺調査は二人で宜しくね」
「は?」
そう言って華崎は凛っと華やかに歩いて行った。
くそう、面倒事を押し付けおったな華崎。
そう思いながら若山蓬を見ると若山蓬は無邪気に笑った。
1952歳。
嘘だよな。
「若山先輩」
「あ、ちょっと待って初君。私の事は敬意と慈愛と親しみを込めて蓬ちゃんって呼んでね。私的にはこの名前気に入ってるんだ。それから敬語止めてね。友達でしょ?」
そんな事言われたってな。
「蓬、ちゃん」
「うんうん、それで良い。それじゃあ本題に移ろうか。何だっけ?」
「何だっけは無いでしょ。近辺調査。彼女の人間関係について片っ端から調べるんだよ」
「あ、それならさ、喰欲の下っ端達に周りから見た被害者について聞こう!それから誰がナイフ持ってないか調べようじゃないか!ね、初君」
それってルール違反じゃねぇか?まあこの学園自体がルール違反だから、良いか。
「……そうだな」
「初君おんぶ」
両手を広げておんぶを求める若山蓬。
おんぶ、だと?
「1952歳にもなって…」
「1952歳だからこそこういう楽しみがほしいんだよ」
「それよりスカートは?ペラリだぞ」
「大丈夫、今時の少女はスカートの下に短パンはいてるから」
「そういう問題?」
「そういう問題」
どんな問題だ、と嘆息しつつ彼女を仕方なく背負う。軽い。だが髪が重い。
「髪、引き摺って良いのか?」
「うんオーケー」
「じゃあまず何する?」
「そりゃぁ私のアジトに行くに決まってるでしょ?部隊ごとの全部召集してナイフの出所探ってやるんじゃよ」
「そうか。で、どこ?」
「ん、西側にある中等部K教棟6階全部が私のお城だからそこまで連れてって」
お城って、ただの学校だろ。
「了解、あ、ちょっと待って」
俺は片手で先程渡されたイヤホンを耳の中に突っ込む。
フィット感はまあまあだな。
「じゃあ行こうか」
「レッツゴーファイオー」
俺は1年七組を出た。
20110619
放置すみません。