例文アナザー

□第三章:廊下
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若山蓬(わかやまよもぎ)。
年齢、学年、共に不明。
35年も前からこの学校に住む。
その理由も不明。
解っている事といえば、性別が女であること。
そして―――、
『喰欲』という殺人組織のリーダーであること。

「その伝説に近い若山先輩が犯人だって言うのか?それなら目的が解らない。若山先輩が伝説に時点で何も解らないはずだろう?」

「何言ってるの?」

華崎は怪訝そうな顔つきで俺を見る。
俺は慌てて言いかえる。

「あ、やっぱり『若山先輩』っていうのは『喰欲』っていう『殺人組織』のリーダーが代々受け継ぐ名前なのか?それ以外有り得ねーよな。第一、35年も生徒やってるわけねぇし…、もしかすると教師なのか?」

それでも気に食わないといった華崎。

「初君、君の脳みそは500ccかね?」

「猿人じゃねぇよ」

ワトソン君、とでも言いたそうなホームズ先生。
いやいや、俺の考えは『普通』だと思うんだが。違うかいホームズ先生。

「悪いが大ハズレ。ティッシュも貰えねーよ。初君の『推理』じゃ」

「どんなハズレ方したらそうなるんだよ華崎」

「それより初君は若山蓬の全てを間違っている。彼女は一人しかいない。それに教師じゃない。それに入学時の年齢プラス35年っつう外見でもねーよ。どちらかというと五歳児の外見に一億年分の知識だ」

どんな生物だよそれ。

「人間な」

「人間でそんなのって…」

「有り得るんだよ、この世界なら」

この世界。
地球、アジア、日本国、学園、異宗、組織。

「存在するんだよな、若山蓬先輩」

「あったりまえでしょ。初君はほーっんと馬鹿だね」

いるのなら。

「会えるか?」

「逢えるよ。絶対合う。遇うに決まってる。遭わないとダメ。会う、今すぐに」

「今、すぐ?」

俺は周りを見渡した。
特に変わった所なんて無い。
不思議なところも無い。

窓も閉まってる。
扉も閉まってる。
その他諸々、現在俺達しかいない。

だが華崎の確信からいくと『今すぐ』に若山蓬先輩に会う事になるのだろう。

どこから出てくるのだろう。
どこに隠れているのだろう。

俺は疑問を胸に辺りを見渡す。

やっぱり、人の気配なんてしない。

「まあ解らなくて当然だろうよ。若山は『人であって人ではない存在』だからな」

「それって幽霊か?」

「まさか」

「幽霊が生きてる人間殺すはずないか」

「それはどうだか知らないけど。ていうかそろそろ『来る』よ?」

廊下を歩く音が聞こえる。
どちらかというと駆けるに近い足音。
それはこちらに近づいてくる。

足音に俺は鳥肌がたった。
金縛りにあったみたいに背筋が凍った。
指先が震える。

蛇を前にした蛙のような気分。

大した事は無いはずなのに。
一人の女子に会うだけなのに。

『震え』が止まらない。

何かが来る。

本能が危険信号を発した。

扉が開く。

「あ、曖ちゃん?おひさー」

「よ、若山、元気にしてたか?」

「うん!そうだよ!元気なんだよ!」

若山蓬。
年齢、学年、共に不明。
35年も前からこの学校に住む。
その理由も不明。
性別は女の子。
『喰欲』という殺人組織のリーダー。
外見。
平安時代の貴族みたいな黒髪。見たところ約2メートル。それを床に引き摺っている。
目は大きくてくりくりしている。
色白で笑顔が可愛い。
服装はセーラー服。
身長はだいたい、120センチメートル。

とてもではないが。
入学時の年齢プラス35年という歳には見えないし、一億年分の知識があるようにも見えない。

どちらかというと無邪気なただの幼稚園児だ。



20110520

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