短編
□恋の始まりは地獄の中で
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「クソッ、キリがない!」
「残りの弾数がヤバいわっ」
どこからか沸き上がってくるゾンビ達。撃っても撃っても、また次のゾンビがやって来る。
しかもここは下水道。視界がかなり悪い。レオンとクレアが奴らに食べられるのも、これでは時間の問題だ。
「一旦引くぞ!クレア、こっちだ!」
「ちょっと、レオン!?」
レオンが壁に向かって走り、その勢いで壁を蹴り上げるとそのまま上にある大きなパイプにぶら下がった。
「一人だけずるいわ!」
レオンに続き、クレアも負けじと壁を蹴り上げパイプにぶら下がった。
「おてのもんだろ」
「女ナメないでよ?」
二人はパイプによじ登り、ペンライトで足元を照らす。
すると、白濁した目をぎらつかせ大口を開けてこちらに手を伸ばしているゾンビ達がいた。
なんとも気味悪い風景だ。
「どうするのよ。もう降りれないわ」
「仕方ない。このパイプをつたっていくしかないだろ」
「え、本気?」
クレアは足元を見下ろす。薄暗い中に浮かび上がる人間の形をした化け物達。鳥肌が痛いくらいに立つ。
「心配すんな。俺の服掴んでれば大丈夫だから」
「えっ、う、うん」
不覚にもその言葉にドキッとしてしまったクレア。彼女はいそいそとレオンの背中の袖を掴んだ。
「…なぁ、クレア」
「ん、なに」
「君とは違う場所で会いたかったよ」
「!?」
これが恋の始まりかしら。
(なんて、ね)
***