自分の体がギリギリ収まる排気溝の中で上がる息。そして小さくなる足音。だが遠くの方で銃声が響いている。
また大きくなる咆哮。銃声が止み、それが聞こえたかと思うと、また何も聞こえなくなった。
その時脳裏浮かぶ、いつかの事。
一番助けたかった、一番愛を教えてあげたかった人を、自分は助けられなかった、あの日。
「っ…」
クレアは身を捩りながら排気溝から抜け出し、今まで音がしていた方へ駆け出そうとしたが、腰にあるトランシーバーが反応してる事に気付いき慌ててトランシーバーを抜き応答した。
「Leon?!」
『ああ。そっちは平気か?』
ノイズが雑じっているが、確実にそれはレオンの声だった。クレアは安堵の息を吐き出した。
「…ええ…平気よ。レオンは?」
『こっちも平気だ……ああいうのが一体だとは思えない。油断するな』
「そうね。今そっちに行くわ」
『いや、君に頼みたい事があるんだ』
「なに?」
クレアは辺りに気を配りながら、トランシーバーに耳を傾ける。
『レベル4の部屋を見つけたんだが、職員専用カードがないと開かないらしいんだ。頼んでいいか?』
「…わかった。あなたはどうするの?」
『俺は…ヂッ…ッてる……ヂヂッから、君は…ヂヂヂヂッ…』
「レオン?聞こえないわ」
ノイズが酷くなってきた。クレアは電波が良いところを探そうとするが、生憎ここにはそんなところはない。
『……とはヂッヂッ……クレ………るか?おいヂヂヂヂヂッ、ブチッ…』
完全に切れてしまったらしい。応答も、ノイズ音もしなくなってしまった。
「…カード……」
クレアは少し考えた後、銃を構えながらエレベーターへと引き返した。