Fall in your song!

□#34
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『かわいそうにねぇ。君のお姉さん、ソウに影響されて自殺したんでしょ?』

映画を見に行って、すごく久々に笑顔を見せてくれたあの日が、最高から最悪に変わった。

『……自殺、なんですか? でも、ソウが出てた映画が大好きで、それを見た日からすごく明るくなったのに』

元気を与えてくれたソウが姉を自殺に追いやるはずがない。そう言うと、目の前の男性はフッと笑った。

『だからじゃないか』
『?』
『ソウが大好きだったんだろう?』

命を賭けて 君を愛すると誓った
この言葉に嘘はないから
今 君に 私の愛を示そう

『あれって、〈死なないと愛していないみたい〉に聞こえない?』

知ってる? 君のお姉さん、好きな人がいたんだよ。だからさ、自分を稚早に、相手を奏に見立ててたんじゃないかな。

――気付いたら電車に飛び乗っていた。
今冷静に考えれば、なんであの男性はソウのスケジュールを知っていたんだろう。でも、教えられた通りに待ち伏せしていたら本当にソウが現れた。
大好きだったのに。恩人だとさえ思っていたのに。そんな人に、裏切られた。
悔しくて悔しくて、悲しくて苦しくて、どろどろしたものをぶつけずには居られなかった。
今でも覚えている。ソウの絶叫。間をおかずの引退宣言。
数日後に稚早が早実を訪ねて来て知った。
あの男の言ったことは全部嘘だと。
……以来、ずっと、耳の奥に、引退に追いやった彼女の絶叫が残って、自分を苦しめていた。


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