Fall in your song!

□#33
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何、この状況。どうしてこうなった。
少女の部屋に四人で膝を突き合わせて、沈黙すること十数分。
なぜこのメンツでこんなことになっているのか、名前には皆目見当もつかなかった。
そもそも、今日は名前が3年前に死なせてしまったという少女のお墓参りと、許してもらえるとは思っていないが遺族への謝罪をしに来たのだ。
だというのに。
名前は俯けていた顔を上げて稚早を見る。
じっと膝の上で握っている拳を睨みつけながら、尋常ではないオーラを醸し出していた。そのオーラの実体は、緊張からくるものに似ている。だから誰も一言も発しないのだ。
次いで名前はちら、とトキヤに目を向ける。
視線に気付いた彼もこちらに視線を寄越すが、互いに数秒目を合わせて困ったように表情を歪めるにとどまった。
結局、二人にはこの状況を作り出した理由は分からない。
その時、一つ深呼吸する音が聞こえてきた。しばらく黙り込んでいた稚早だった。

「……ソウ」
「はい」

背筋を伸ばして返事をすると、彼はいきなり床に両手をつき、頭を下げてきた。
これは、俗に言う、土下座。
ぎょっとして、名前もトキヤもうろたえる。

「ち、稚早!? 何してるの!?」
「――申し訳、ございませんでした!」

心の底からの自責にも近い声での謝罪に、名前は困惑する。彼に謝られるような――ましてや、ここまで追い詰められたような謝罪をされる心当たりがなかった。
だが、返って名前は冷静さを取り戻した。
同席している少女が俯いたまま、稚早の行動に特別驚いた様子もないのを確認して、目を細める。
この様子だと、少女も何らかの関わりを持っている。とするならば、彼女の姉の件とも何らかの関係があるのだろうか。しかし、稚早が私に頭を下げるような事柄って何かあるだろうか。ましてや、こんな悲痛な声で謝られるようなことなど――。
考えて想像するのは得意分野ではある。しかし、名前が考えるよりも早く、稚早が顔を上げた。

「3年前、君が芸能界を去ったのは、そこの早実に『姉はソウに殺された』と言われたから、だよね?」

早実(ハヤミ)と名を呼ばれた少女がぎゅっと目を伏せたのを知らぬまま、名前は目を見開く。

「! 何で、稚早がそれを知って……」
「それは僕のせいだから!」
「……え?」

再び頭を下げた稚早は、懺悔にも似た響きで繰り返した。

「僕のせいだから。君が辞めた原因は、僕という――“大住稚早”という存在のせいだ……!」


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