Fall in your song!

□#28
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早乙女学園に通っていた者の中には、大抵こういう方程式が成り立っている。

パートナー=作曲家+アイドル

だから「組む」と言われれば、作曲家とアイドルが組む、という風に最初は受け取る。
……それは、今回も例外なく。

「は? 組むって、稚早と私が?」
「うん。僕とソウが」

にこにこ笑って頷くかつての共演者に、名前は怪訝な表情を向け続ける。

「え。どっちが作曲するの?」
「あ、もしかして作曲したかった?」
「……」

この時、名前は瞬時に悟った。
このまま話を進めても、きっと噛みあわない。
唖然と黙って事の成り行きを見守っている観衆の前で、名前はこめかみに人差し指を当てながら唸る。

「えーと? 何からどう訊けばいいんだ?」
「何でも訊いてって言いたいところだけど、僕らには時間がないんだよね、実は。ってわけで、シャイニーさん。さっきの提案、受け入れてくれませんか?」

シャイニングに向き直って、稚早は真剣な目をする。するとシャイニングは口角を吊り上げた。

「三日だ。三日で私が納得できる歌が歌えたら彼女(苗字)を認める。但し」

濃いサングラスの奥で、何かが光る。

「できなければ、お前もクビだぞ、長月」
「望むところです」

ざわつく会場内は、たった今交わされた会話の真意を誰もが掴み損ねている。
どういうことだ。「お前もクビ」ということは、稚早はシャイニング事務所に所属しているということにならないか。だとしたら、なぜ彼がここにいる。もともと彼が所属していたはずの事務所はどうしたのか。
ぐるぐると考えていても、答えは見つからない。当然だが。
しかしそんな名前の手を、稚早が握る。

「ん?」
「さて、ソウ。シャイニーさんの許可も取ったことだし、家に行こっか」
「……家って、誰のです?」

それまで黙っていたトキヤが名前と稚早の間に入りながら問うた。すると稚早は良い笑顔でさも当然のように言ってのけた。

「そりゃもちろん、君たちの家だよ」
「「え!?」」

ST☆RISHのみならず、春歌も驚きの声を上げる。

「結果が出るまで、僕もソウも、君たちの家に住まわせてもらうよ」

人間、驚き過ぎると声も出ないらしい。
今の彼らがまさにそうだった。


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