Fall in your song!

□#26
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ライブの反響は凄まじかった。
CDは発売から三日でST☆RISH史上最高売上を記録。トキヤのソロもグループ内ではトップの売上を記録している。――が。
発売から五日目。

「えー、非常に言いづらいが言わなきゃならないことだから言おう」

健が視線を斜め下に逃しながら、メンバーからの視線に耐える。

「……一週間でミリオンは、厳しい。十日ならまだ十分ありえるんだけどな」
「「……」」

事務所の小会議室に呼び出されて告げられた言葉に、誰も何も反応しない。
参った、と表情に出しながら、健は隣の龍也と林檎に助けを求める視線を送った。
龍也がデスク上を滑らせて紙をメンバーに寄越す。
林檎が暗い表情で告げた。

「その売り上げ推移でいくと、明後日までにミリオンは難しいわね。それに日にちも悪いわ。目標達成は早くても明々後日……発売八日目よ」
「それじゃ……」

春歌が唇を噛む。
それでは間に合わない。八日ではダメだ。七日でなければ。
メンバーそれぞれが、ぐっと強く拳を握る。
はあ、と龍也が重いため息をつく。

「前提条件――名前ちゃんも戻ってこないしな」
「戻ってきます!」

がたん、と大きな音を立てて春歌が立ち上がる。
一斉に注目されて、一瞬怯んでから、再び強い目を龍也に向ける。

「一ノ瀬さんの歌を聞いて、ST☆RISHの歌を聞いて、戻ってこないはずがありません!」
「でも……もうライブから、十日以上経っているのよ」
「それでも戻ってきます!」

頑なにそう繰り返す春歌に、健と龍也そして林檎がじっと視線を注ぐ。
そうだね、と同意したくても出来ない状況。
もう少しで、今年が終わろうとしている。


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