Fall in your song!

□#22
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夕食の時間にも名前は部屋から出て来なかった。
今はそっとしておいてあげよう、と結論を出したものの、メンバーは正直、名前にどう接すればいいのか分からなかった。……いや、レンの場合は、出した結論が今、彼らが名前にできる最善のことだと分かっていただろうが。

ソウやST☆RISHとの関係についての問い合わせが事務所に殺到しているため、その対応をするから、と龍也も健も帰っていった。顔は撮られていないからあれはソウじゃない、とシラを切るつもりだと言っていた。それに、明日にはシャイニングがメディアに圧力をかけて事態は沈静化するだろう、とも。

練習をする気は誰にも起きず、メンバーも春歌も部屋に引き揚げた。
トキヤも例外ではなく、ベッドに潜り込んで目を閉じる。――しかし、いつもよりも早い時間だからか、なかなか寝付けない。
体を起して深いため息をひとつ。
分かっているのだ。本当は名前が気になって仕方がなくて眠れないのだということぐらい。
水でも飲みに行くか、とベッドから下りて部屋を出、階段を下る。その途中で、名前の部屋から明かりが漏れていることに気付いた。

「……」

彼自身も意識していないうちに、その部屋の前まで歩いていた。
意を決して、ドアをノックする。
長いようで短い時間、その場に立って中の様子を窺っていると、

「――どうぞ」

半日も経っていないのに、懐かしい、と感じる声が応じた。
そのことにホッとして、トキヤは「失礼します」と声を掛けながらドアを開けた。


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