Fall in your song!

□#15
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翌朝、目が醒めた名前は、なんとなく海辺へ出た。
朝早いせいか、人ひとりおらず、波の音と自分が砂を踏みしめる音だけしかしない。
水平線の彼方に目を凝らして、物思いにふける。
昨日は、つい、しゃべってしまった。トキヤに、訊いたことを後悔させるような表情をさせてしまった。

「ウソをつけば良かったのに」

それでも言わずにはいられなかった。言えば、自分が楽になるような気がしていた。秘密にしているのが後ろめたくて。でも、それは甘えだ。けれど過去は消えない。なかったことにはできない。だから。

「名前?」
「……健ちゃん、と、龍也さん」

いつの間に仲良くなったんだろう、と名前が心の内で首を傾げていると、ランニングしていたらしい彼らは寄ってきた。

「変な顔」

両頬を引っ張られて、名前は健の手を叩いて抵抗する。
ぱっと離した健は、名前の肩に腕を乗せて顔を覗き込んだ。

「また過去か」
「さすが健ちゃん」

よく分かっている。
それっきり黙ると、龍也がぽつりと言った。

「そろそろ話してもいいんじゃねーの?」
「んー……」

みなが自分の過去を知りたがっているのは知っている。単なる好奇心だけじゃなく、今まで名前が取ってきた不審な行動の意味を知りたいのだろう。

「きっとみんな優しいから慰めてくれるね」

皮肉交じりにそういうと、健が呆れたようにため息をつく。

「そうやって、いつもお前は立ち直るきっかけを潰すよな」
「忘れちゃいけないから」
「だからって、歌うことを辞めなくても良かったんじゃないのか」
「でも、そしたら今の私はここにはいないよ。私は、ST☆RISHのマネージャーでいるこの瞬間が、好き」

輝いているものは好き。でも自分は輝こうと思わない。
そう告げると、いつものように、彼らは悲しい顔をした。


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