Fall in your song!

□#14
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8月のある日の夕食。
名前は食事を作ってテレビの前のソファに寝転がっていた。
それを見て、那月がそっと声をかける。

「名前ちゃん、具合でも悪いの?」
「いーや。ただの疲れ。明日からの社員旅行のために仕事を片付けてたから」
「「社員旅行?」」

春歌とメンバーが疑問符を浮かべると、彼らのマネージャーは、

「あ。」

と声を上げた。

((まさか……))

嫌な予感が彼らの胸中をよぎる。

「明日から社員旅行に行くから、みんなも準備しておいてね」
「「やっぱりそう来るか!!」」

最近、やけにスケジュールが過密だなと思っていたが、まさか背後にこんな事情が隠されていたとは。それより何より。

「……なぜ今まで黙っていた?」
「別に黙ってたわけじゃないよ、真斗。ただ、今まで軽く忘れていただけ」
「黙っているよりタチ悪いよ、レディ?」
「だからレディと呼ぶなと言うてるに」

むくりと起き上がった名前は、背もたれにもたれかかって、ねえ、とメンバーに声をかけた。

「今日、ドラマのゲスト出演の依頼があったんだけど」

食事をしている彼らの手が止まる。
床を何とはなしに眺めながら、名前は続けた。

「ゲストって言ってもワンカットとかじゃなくて、一話分出る方のゲスト出演ね。刑事ドラマで言うと、その回の犯人役的な」

刑事ドラマ好きの彼女らしい例えに、一応の質問。

「俺ら犯人役?」
「や、違うけど」

翔の言葉を否定し、名前は彼らに目を向けた。

「どうする? やりたい?」

瞬間、戸惑うような空気が流れる。

「……? なに?」
「――俺らがドラマに出るの、本当は嫌、とか?」
「音也くん、何言ってるの」

ははっ、と笑うと、トキヤが深くため息をついた。

「何よ」
「自分の顔を鏡で見たらどうです? 無表情ですよ」

言われて顔を押さえる。

「そう、かも? ごめん。何の問題も無いの。私の表情がこんななのは、疲れてるからに他ならないので、お気になさらず。で、どうする?」

そういう理由なら、と彼らは軽く視線を交わし合って、やる、と返答する。
すると名前は笑って立ち上がり、彼らと同じテーブルに着いた。

「りょーかいっ。じゃあ、それなりに頑張ってよね。旅行から帰ってきたら、だけど」

思い思いの返事が来たところで、片付けをしているトキヤに言いつける。

「私のご飯用意して〜。お腹空いた〜」

言われた当人は、嫌そうな顔をした。自分でやれ、というのと、なぜ自分が、という表情。
面白いから名前は両手でテーブルを叩く。

「お腹空いたお腹空いたお腹空いた!」
「静かにしてください! 分かりましたから!」

名前の分の夕食を盛り付けて持ってきたトキヤに、ニッコリ笑ってありがとう、と礼を言うと、彼はしょうがない、とでも言うように笑い返した。


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