Fall in your song!

□#13
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ドアを蹴破る事件の二日後から、ST☆RISHはセカンドシングルを引っ提げて、公園や広場などでちょっとしたライブを全国五か所で行っている。ミニミニツアー、と企画した名前は言っていた。
残すところ二か所となり、今日は現地入りして打ち合わせ、会場視察を行った。
その間、名前は終始渋い顔をし、一緒に来た春歌も心配そうな表情を浮かべていた。
原因はただ一つ。

「今日はここまで。――トキヤ、寝なさい!」

一ノ瀬トキヤの体調不良である。
びしっ、と指を突きつけて言うマネージャーに、トキヤは大丈夫です、と覇気のない声で返した。
ここは宿泊先のホテル。その小会議室を借りて練習を行っていたが、名前が練習終了を言い渡した今、その部屋は変な圧力がかった空気が流れる。

「まだ練習出来ます」
「そんな……! それで明日もっと具合が悪かったら意味がないです!」
「そうそう。春歌ちゃんの言う通り!」

うんうん、と頷くメンバー。
やっと諦めがついたのか、トキヤはため息をついた。

「……分かりました。今日は部屋に戻ります」

その言葉に、名前はやっと表情を緩める。
少し穏やかになった彼女は、

「まだ同じこと言うようなら問答無用で拳を入れて沈めるところだったよ」

おおよそ表情に似つかわしくない発言をさらっとしてのけた。さすがにこれには、全員が背筋を凍らせる。
けれど、名前がトキヤを気遣っているのは十分というほど分かっている。

「部屋まで連れ添おうか?」
「いえ、平気です」

あ、じゃあ、と音也が手を上げる。

「俺が看病してあげようか。同室だし」
「静かにしていてくれればそれで十分です」

今度は那月が思いついたように手を叩く。

「じゃあ、僕、おかゆ作りますよ」
「「ヤメロ!!」」

全力で止められた那月は、少し残念そうにその要求を受け入れた。
解散したメンバーは、トキヤの体調を心配しつつも各自の部屋に戻った。
ぐっすり寝れば、少しは良くなる。
誰もがそう思い、トキヤを音也に任せて眠りについた。


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