Fall in your song!

□#12
1ページ/4ページ

セカンドシングルを出して、そう日数が経っていない今日。
雑誌のインタビューとそれに載せる写真を撮るために、メンバーと名前はスタジオに来ていた。
ティーンズ向けの雑誌の撮影もあるらしく、時間がある彼らはスタッフの許可を得て見学させてもらう。

「すごーい。キレイな人ばっかり」

感嘆の声を上げた名前は、一緒に見学しているメンバーを見てクスッと笑った。

「? 何だ」
「いやぁ。最初にあなたたちに会った時も、キレーなのが集まってるなぁ、と思ってたなって思い出して。輝かしいオーラに、ちょっと気後れしてたんだよね。最近はそんなことないけど。ああでも、今もあなたたち、十分カッコいいよ」

さらっと褒められて、何らかの反応を示す者とスルーする者に分かれた。
レンが名前の肩を抱き、そっと囁く。

「名前も相変わらずキレーなままだよ」
「うん。お世辞はいらないかな」

ぺし、と肩に置かれた手を軽く叩くと、軽く首をすくめてレンが手を引っ込める。
それに名前は少しホッとした。今話題の新人アイドルがいるというだけで、女性スタッフが色めき立っている。いくらマネージャーといえど、レンに絡まれている名前をよく思わない人もいるはずだ。更なる反感を買わずに済んで良かった。……まあ、レンもそれを分かっていて退いたのだろうが。

「名前」

ちょいちょい、と肩を叩いたのは、運転手である健。

「どしたの、健ちゃん」
「向こうで、ええと…堀切さん? って人が呼んでる」
「堀切……。ああ、編集長さんね。分かった。健ちゃん、代わりにみんなと一緒にいてくれる? 多分時間になったらスタッフさんが呼びに来てくれると思う」
「おー」

タッチして名前は健が来た方向に歩いて行く。
健がモデルを見ながら、すげぇ脚線美、とかそんなことを呟くと、音也が声をかける。

「ねえ、健ちゃん。編集長って、俺らが今から受けるインタビューの雑誌の?」
「ん? そうそう」
「へえ。名前ちゃんはそんな人と知り合いなんですねぇ」
「だなー。マネージャーって顔広いのかねぇ」

あくびをして、健は別のところに目を向ける。
見ていた撮影が終わり、インタビューまで時間があるのでメンバーはその場で、健を交えて無駄話を始めた。すると、彼らの元に撮影していたモデルが集まってくる。それは当然と言えば当然の光景だった。

「あの、私たちも一緒にお話していいですかぁ」

さすがモデルというだけあって、自分がどういう角度でどういう仕草をすれば男性に効果的かを分かっている。それに引っかかるものはいなかったが。
レンがニコ、と笑って申し出に応じた。

「わたし、ST☆RISHのファンなんです」
「わたしもっ。あの、良かったら仕事終わった後、一緒に食事でも行きませんか?」
「食事、ね」
「ね、いいでしょう? 一十木くん、一ノ瀬さんも」

輪から外れて話していた二人の腕に、それぞれ女の子が絡みつく。
驚く音也と軽く眉をしかめるトキヤに、あらま、と間の抜けた声が耳に入った。
見ると名前が興味深そうにしげしげと彼らを見る。

「女性を侍らすなんて、やるねえ」
「侍らせてなどいません。……失礼」

そっと女の子から逃れて、トキヤは名前の元に歩み寄る。

「編集長と話は済みましたか」
「あ、うん。そうだ。そろそろ始めるって、インタビュー」

名前はくる、とメンバーとモデルたちに向き直って告げる。
じゃあ、と別れの言葉を述べたメンバーが名前の元に集まる。
メンバーの背を押しながら、名前は苦い顔をする。
後ろから、突き刺すような、いくつもの視線。――これは、反感を買ってしまったということか。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ