Fall in your song!

□#38
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翌日、名前を見て開口一番、健はこう訊いた。

「お前、昨日泣いたのか」
「うん」

あっさりした答えに、健は半眼になる。

「で、割り切ったのか」
「うん」

満面の笑みを浮かべる少女に、恐る恐る尋ねた。

「……昨日までの自分に言いたいことは?」
「“くよくよ泣いてんじゃねえ”」
「切り替え早ッ!」
「あはは」

泣いたらさっぱりした。そして落ちついて考えたら、自分の今の状況が正しくないことが分かった。
メンバーに相手にされなくて寂しい? バカ言ってんじゃないよ。馴れ合いじゃないんだ。大人になれ。だいたい、どうしてこうなった。
そう考えた時、名前はバカらしくなったのだ。正しいことをしているのだから胸を張らなきゃと思った。
……そして現在に至る。
先に外に出ていた名前は、メンバーが出てきたのを見てさっさと助手席に乗り込む。それを見た健は、はあ、とため息をついた。
この数日で、いくつの幸せが逃げたことだろう。

「なんだよ。変わったのは名前の心構えだけか」

つまり状況的には何も変わっていないということだ。
運転席に乗り込んだ健は、恨みがましく言う。

「お前、いい性格してるよ」
「あはは。私もそう思う」
「そうだよな。お前がいつまでもくよくよしてるような人間なわけないよな」
「ヒドイな健ちゃん。私だってくよくよする時もあるよ」
「でも立ち直るんだろ。規格外な早さで」
「まあね♪」

強がりでもなんでもない。これは彼女の本心だ。
ぴりぴりした空気を醸し出している車内に、健の方のが、気が滅入りそうだった。


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