Fall in your song!2

□#42
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……せっかく。せっかく、母親が遠出でいないというのに。

「ちょっと待てええええ!!」

朝っぱらから、家の中に名前の絶叫が木霊した。
次いでバタバタとリビングに集まってくる複数の足音。

「どうした!?」

ドアを開けるのと同時のその問いに応えたのは、彼らのマネージャーではなかった。

「キャンッ」

……きゃん?

メンバーと春歌が視線をスッと下ろすと、愛くるしい瞳の持ち主と目が合った。
毛が長く、子狐に見えなくもない動物だ。が。

「キャンッ」
「「…………」」

これは、どう見ても。

「犬だな」
「犬だね」
「犬ですね」
「「……なんで?」」

視線を上げて事情を知っているだろう彼女に問うと、相手は深いため息をついた。

「簡潔に言うならば、『母さんが置いてった』」

しゃがみこんで犬を抱き上げた名前は、昨夜は無かった犬用ゲージの中にその子を入れる。
キャンキャン甲高い声で吠える犬を無視しながら、彼女はどかっと椅子に腰かけた。

「実はウチ、犬を飼ってて。父さんと母さんが旅行に行った時に連れてったはずなんだけど、母さん帰って来たじゃない? 一日遅れで犬も来たんだよね。……というわけで」

手の平を犬に向けながら彼女は言った。

「ウチの犬のトムです。犬種はポメラニアン。可愛い顔して活発・半凶暴・欲求に忠実です。ほら、トム、挨拶」
「……」

挨拶し(吠え)ないのかよ!

全員が心のうちでそうツッコむも、犬に彼らの声が届くわけがない。
肩をすくめた名前はテーブルの上に置いてあったメモ紙をくしゃりと握り潰してゴミ箱へ放る。

「まったく。自分は行っちゃって、メモ一枚で説明を終わらせるなっつーの。昨日のうちに話しておいてよね」

そしてハア、とため息をついた名前は、いつものように朝食を用意し始めた。


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