Fall in your song!
□#06
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名前はST☆RISHと春歌を練習のために早乙女学園へ行かせた。早乙女学園を卒業した後でも、シャイニング事務所に所属していれば学内の施設は使用可能である。
「別に、ここで練習してもいいじゃないか」
朝食の時に本日の予定を名前が告げると、レンがリビングの床――つまり、家を示した。レンの発言はもっともで、他のメンバーも頷く。
しかし名前はスケジュール帳を顎の下に当てながら曖昧に笑ってごまかした。
「ちょっとね……」
その言葉と表情に、全員がある種の不安を感じたのは言うまでもない。
それはともかく。
不安の種をまいた名前は一人事務所に来ていた。
日本に帰って来てから事務所を訪れるのは、これが初めてである。けれど気後れを感じさせない、むしろ堂々とした足取りで入っていく。
「こっんにっちはー。あ、間違えた。おはようございまーす」
友人に対する挨拶とそう変わらない調子で挨拶して入ってきた者を、ぎょっとした表情で迎える所員に名前は笑顔をもって返す。しかし驚いた所員は彼女が誰であるかを理解した瞬間、みな笑顔を向ける。
「おはよう、名前ちゃん」
「久しぶりね」
「元気だった?」
「はい。お久しぶりです、元気ですっ」
口ぐちに向けられる言葉に更に笑みを深め言葉を返しつつ、名前は目的の人物の姿を探した。
「日向龍也なら向こうだよ」
奥の部屋を示されて、ありがとうございます、と返しながらそちらに向かう。
しかしドアをノックする前にそれは開いた。
「あ」
「ん?」
「開いた」
「……名前ちゃん」
「おはようございます」
最初こそ驚いていた龍也だったが、相手が名前だと気付いた瞬間優しい笑みを浮かべる。
「おはよう。そうか、昨日の話だな」
頷くと、龍也は名前を少し待たせ、何か書類みたいなものを持って戻って来た。そして名前をそのまま部屋に通す。
「さっそくなんだが――ああ、座って良い。あいつらのデビューライブに変更が生じた」
「ええ!? この時期に!? もう三週間切ってるのに!」
「社長が持ちかけられた話を了承しちまって」
ああ、本当にメンドくせぇ、と手で髪を乱す龍也に名前はそっと訊く。
「ちなみに、シャイニーさ……社長はなんて?」
「この時期に変更だなんて何考えてるんですか、って言ったらよ、『面白ければそれでいいのデース!』だとよ。いろいろ苦労するのは俺と名前ちゃんだっつーの」
話しながら怒りを再び呼び起こしたのか、龍也の目元と口調がきつくなっていく。
それでも名前は訊かなければいけないから、訊いた。
「――で、私たちが苦労しなきゃならない変更の具体的内容とは?」
「ST☆RISHのデビューライブの中止」
「…………え?」
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