Fall in your song!

□#36
2ページ/7ページ



朝食の席で、春歌の手から箸がポロリと落ちた。

「わ……私もインタビュー!?」
「うん」

あっさり頷くマネージャーに、朝から春歌はめまいを起こしたかと錯覚しそうだった。
人見知りの気がある春歌にとって、インタビューなど、もっての外だ。しかもそれを前日に言うのだからタチが悪い。……だが、名前に言わせれば、当日よりマシだ。
青ざめている春歌は、気遣うような6人の視線を集めながらも何とか声を出した。

「なんでそんな、いきなり……」

しかしその疑問に名前は首を横に振る。

「いきなりじゃないよ。ST☆RISHがインタビューを受けるって仕事を受けた時から決まってた」
「え? じゃあ、なんで教えてくれなかったんですか!?」

悲鳴にも似たその質問に、名前は箸を置いてゆっくり微笑む。そして昨日の自分が漏らした言葉を繰り返した。

「“…………あ。忘れてた”」

((出た……))

名前のお得意文句「忘れてた」。
何度この言葉に悩まされてきたか。しかし今までも今回もさして仕事に支障は来さなかった。来さないが、当人の神経がすり減る。
ごちそうさま、と手を合わせて席を立つ名前に、もはやショックから立ち直れない春歌は、固まったまま何も言わなかった。いや、言えなかったというのが正しい。

「ねえ、名前?」
「なあに、レンさん」
「そういう大事なことはもっと早く言わないと」
「そうだね。じゃあ、早く言うことにするよ」

にっこり笑った名前は、メンバーと春歌に身構える隙を与えずに言った。

「明日のインタビュー、場所が早乙女学園に変更になったから。そしてインタビュー終了後、後輩への講義をしてもらいます。いやあ、楽しみだねえ」
「「ちょっと待て!!」」

今、さらっと何を言った!?
そう問えば、彼らのマネージャーは同じことを繰り返した。

「聞いてませんよ、そんなこと!」
「だって昨日決まったんだもん」
「だから、名前さん。そういう大事なことは早く言ってって……」
「今言ったじゃない。レンさんが早く言えっていうから。それとも何? 昨日の夜、わざわざみんなの部屋に言いに行った方が良かった?」
「「……」」
「まあ、そういうことだから。よろしく!」

ウインクされても、今は何とも思えない。それどころか最初に会った時とデジャヴって、同様の衝撃が彼らを襲う。
そして名前は春歌をも指差す。

「もちろん、春歌ちゃんもね♪」

青を通り越して白くなった春歌は、今度こそめまいを起こした。
――それが名前の発言によるものとは別の原因があることを、この時は誰も知らなかった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ