Fall in your song!2
□#47
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家に帰ってくると、春歌の夕食が名前を待っていた。
「お帰りなさい、名前さん」
「ただいま、春歌ちゃん。夕飯ありがとう」
「いえ……! これくらい、させてください。名前さんも頑張ってますし」
「ふふ。ありがとう」
もう席には全員がついており、空いている席に名前も腰を下ろした。
「「いただきます」」
夕飯を食べながら、今日あった出来事をそれぞれ話す。
特に音也がいつにもまして楽しそうに喋るので、名前は何よりも嬉しかった。
そう。そして、嬉しいことがもう一つ。
「やっぱり母さんがいないと静かで心穏やかでいいねぇ」
しみじみとそう呟けば、周囲も苦笑いをする。
早朝に出掛けていた名前とアヤメが家に戻ると、そのままアヤメは自分の使っていた部屋に向かい、荷物を持ってリビングに現れたのだ。
『私、家に帰るわね。あ、トムも連れていくから』
言うが早いか、ぽかんとしている一同の前から彼女はさっさと去っていた。
去る時に音也を連れていったのには驚いたが、後で無事に彼も戻ってきてくれたので、まあ、よしとする。
「そういえば音也くん。母さんと何の話をしてたの?」
「え? ああ……」
食事が終わったからか、それとも話す内容によってか、音也は箸を置いた。
視線を下ろした音也に、疑ってもいなかったことを疑いそうになる。
まさか――。
「名前さんのことを訊かれた」
「私?」
目元に険をにじませていた名前は意外な言葉にぱちくりと瞬いた。彼は頷く。
「『あの子はマネージャーとしてどう?』って。名前さん、アヤメさんに大事にされてるんだね。何だかんだ言っても、あの人は名前さんの母親なんだなって思ったよ」
「……」
そんなに良いドラマを見た後のような笑顔を浮かべられると、何も言えない。
かろうじて、そっか、と漏らす。
「あ、あと、何でか『ごめん』って謝られた」
「……」
「なんでだろう」
首を傾げる音也に、名前は無言を返す。しかし一応、名前は訊いた。
「音也くん、なんて返したの?」
「よく分かんなかったから、『何がですか』って訊いた」
「……」
デスヨネー。
でも、これで分かった。やはり、名前の思った通りだった。
「名前、どういうことだよ」
翔が訊いてきたけれど、名前は困ったように笑って、さあ、としか答えなかった。
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