メイン(2)
□真夏ラブコメディ
1ページ/1ページ
ミーンミンミンミンミン。
夏の風物詩の一つでもある蝉が、羽を揺らし去年と変わらず同じ音を鳴らす。今は夏休みの季節で、学生の皆は思い思いに遊んでいた。宿題を真面目にこなす者。強さを求め暑い中己の強さを磨く者。何か怪しい研究をしてる者。某黒くて怪しいお兄さんと言われる者を追う者。本当に自由である。かくいう自分も人のことを言えないのだが。
アスファルトは太陽の熱を長時間浴び、歩くものに熱気というダメージを与える。特に今から仕事場に行くサラリーマンなんかはうざったそうにその額に浮かぶ汗を手で拭いていた。大変そうだなと自分はどこか他人事のように考えていた。実際そのサラリーマンとは他人だが。
プリンプの町の近くには砂漠がある。その砂漠で風は熱を持ち、そしてプリンプや隣町に熱風として吹くのだ。そりゃ暑いよね。とアミティは頷く。良く当たると人気の天気の魔導士が、今日は今年最高の気温ですと今朝言っていたのをアミティはぼんやり思い出した。
「まさかこんなに暑くなるなんて・・・」
今はようやく目的の噴水広場に到着し、噴水の近くにいるので若干体内の熱は下がるもののそれでも気晴らしに近いものでしかなかった。何せその噴水が吹く水を出す金属製の口が熱を持っているため降ってくる水が軽く温い。意味ないじゃんとツッコんで帰りたいところだが、生憎このデートに誘ったのは自分である。言い出しっぺがドタキャンなどあってはいけない。
数日前、なんとなく最近シグに会えていないと寂しさを感じたアミティは何も考えずにただ本能的にシグをデート誘った。そして「うんいいよ」と軽いオッケーが出たのである。色気ないな、と苦笑したのが何げに覚えている。
自分がシグと付き合って2ヵ月たとうとしている。その間まったく進展なし。キスはおろか手すら繋がないという。告白したのは自分だ。やはり自分から仕掛けるべきなのかと常々考えるが、生憎とそんな勇気持ち合わせていない。
どうしよっかなーと暑くてまともに動かない頭でこのデートのプランを考える。二人で揃ったらアイス食べたいなーぷよアイス。等とぼやーと考えている矢先だった。
「アミティ」
「あ、シグ」
ナイスタイミングでシグが登場してくれた。丁度いい。
「ねえシグ、二人でアイ「アミティ危ない!」
へ、と考えるのもつかの間、気付けばシグの胸の中にいた。腕には若干熱めの体温が感じられる。え、え、えと混乱してる中、シグが安堵のため息を吐いた。
「大丈夫?自転車来てたよ」
「えっ」
そういえばさっきチリリンとベルの音がしたような・・・
少し記憶を探っていると不意に手が額に当てられた。自分よりも骨がしっかりした大きな手。思わずドキリと高鳴る。
「ごめん、本当に長く待たせた。アイス食べて頭冷やそう」
「う、うん」
いやこれ多分暑さのせいだけでもないな、と思ったがとてもそれを言う余裕はなかった。
あわあわと混乱するアミティに更に追い討ちがかかる。
ふわりと、体が宙に浮かんだ。え、と反射的に声が出てしまう。
「行こうか」
「いやいあややいや待ってシグううううううう!!!!!」
「?何」
「この状況何!?」
「何って・・・僕たち恋人同士でしょ?」
「や、そうなんだけどさぁ・・・!?」
「アミティ、あんまり興奮すると熱中症になる」
そういわれ、口を防がれた。
あぁもう本当にかっこよすぎるよシグ!!!
チュー(真夏の暑い日)の思い出。
end