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□慣れたと思っても
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読書の秋、など関係なくアミティは本を読むことが好きだ。ファンタジー、恋愛、詩、ミステリー、どのジャンルも作者によって様々な表現があり面白い。なので家にいるときは読書をしている。テストがあった日なんかは流石に疲れてそのまま眠ってしまうこともあるが、それ以外の日はひたすら読書だ。なので国語だけは学年一か二を争えるぐらいの実力を持っていた。

今日もアミティは自宅で本を読んでいた。大学生になると、流石に実家からは通えないため、隣町に親(父)に涙を流されたが引っ越した。大概プリンプの生徒はそうだ。田舎のプリンプにあるのは高校までで、大学は隣町にしかない。どこぞのラフィーナの追っかけは何を聞き間違えてか、プリンプから5時間もかかる大学のある町に引っ越したらしいが。今となっては、それは事実なのか嘘なのか確かめられない。まぁ追っかけ改めタルタルを最近見かけないので、嘘ではないのだろう。それもまたどこか寂しいなと、アミティはぼんやり考えていた。

ふと膝に視線を送れば、そこには付き合いの長い恋人がいる。初等部からの付き合いで、恋人という関係に発展したきっかけは彼だった。虫の図鑑を手にじっとそのページの虫を眺めては次に、次にとページをめくっていく。寝ようとしたのか、パタンと図鑑を閉じたと同時に漸くアミティの視線に気づいたようだ。


「面白い?図鑑」

「面白い、虫を見れるから」


そっか、と相槌を打って微笑んだ。いい加減体勢がきつくなってきたので、そのことを訴えると、彼は潔く膝から頭を上げた、と同時に。


チュっ


室内に響き渡るリップ音。数秒たった頃に、ようやくキスされたのだと気づいた。


「い、いきなり何して…」

「可愛かったから」

「……何それ」


あまりにも恥ずかしい言葉を投げられ、アミティは堪らず視線をはずした、それを狙っていたのか、シグはアミティの肩口に顔を埋める。チュ、という音が聞こえてきたということは、赤い花を咲かせたのだろう。それはいつも困るといっている行為だというのに。

ある時の夏、肩口に赤い花が咲いているが誰も気づかないだろうと少し露出度の高い服を着ていったときだ。友人(クルーク)に盛大にからかわれた。


「シグ、それ困るって」

「マーキング、てしってる?」

「マーキング?」


急に問いかけられたアミティは余裕のない脳で考える。確か、犬が縄張りだと主張するために行う行為だった気がする。その問いにそう答えると、帰ってきたのはまたしても恥ずかしい一言。


「僕のも同じ、アミティは僕の彼女だっていう印」


真っ赤に真っ赤に染まった頬に、口付けたのは、やはり一枚上手の彼だった。


慣れたと思ったのに…



どうやらあたしが彼に勝てる日は来ないようです。



end

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