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□甘いりんごは如何ですか?
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りんごを口に含んで、空を見上げた。


今日で3年。いや、4年は経っただろうか。幼馴染みは戦争に行ったまま帰ってきていない。


「必ず帰ってくるから、そしたら結婚してくれないかな?」


その言葉を信じて愛しい人を待っている。お腹には愛しい人との子供が宿っていた。


「まぐろ君・・・早く帰ってきてよ・・・・・・」


その言葉はどこまでも青い空に吸われて消えていった。日に日に積もる不安。もうとっくに、彼は死んだのではないかと不安になってしかたない。戦争なんて、いつ死ぬかわからないものだし、国のために死ぬというのが誇りのこの馬鹿な国のために、死んでいった人間は数知れない。

涙腺が緩むのを感じた。どんどんと青い空が歪んでいって、それを否定するかのようにりんごに噛みついた。少し強めに噛みすぎたかもしれない、りんご特有の甘さと鉄の味が、口内に広がる。それでも噛みついて噛みついて、りんごは小さくなっていった。やがて種だけが残る。

ポロポロと、涙が溢れた。早く、早く帰ってきてと思っても、世の中自分の思い通りになるわけなくて、よけいむなしさが込み上げてきた。いっそこのむなしさを消すために種までも食べてしまおうか、と口に入れるところだった。


「お嬢さん、よろしければ僕とお茶でもどうですか?」


聞きたくても聞けなかった。長い間聞けなかった聞きなれた声が頭上から響いたとたん。涙は引っ込み、代わりに驚きと喜びが私の心を埋め尽くした。

りんごよりも甘いあなたの笑顔があれば、私はきっと乗り越えられるよ。


end

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