捧
□らぶクッキング!
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『イイ男ってのはやっぱ家事ができなきゃね!女にばっかり押し付けるような男は駄目駄目よ。料理くらいぱぱっと作れるようでないと、イイ男、もといイイ旦那失格よ!』
「と狂犬に言われてだな、ここはまず料理勝負からってことになったんだよ」
「ツッコミたいところが色々とあるんだが、まず喰鮫は何でフリフリエプロン?」
「フフ、私料理をする時はこれって決めてるんですよ。あ、勿論貴方のぶんもありますよ」
「死んでもいらない」
ああ…一体何だってんだ。
今日は久しぶりの休暇だし、のんびり釣りにでも行くか〜とか思ってた5分前の俺のうきうきを返してくれ。
「おい川獺、ぼーっとしてねえでさっさと食ってくれよ。冷めちまうだろ」
「食ってどうしろってんだよ」
「勿論、どちらの料理が優れていたか判定してもらうんですよ」
…なんかもう忍としてのスキルとか完全に関係なくね?
と心の中でツッコミつつ、目の前に並べられたふたつの皿に目をやる。
まず蝙蝠作のほう…なんだが、まあ見た目はフッツーの卵焼きだ。でもなんか臭い…し、若干妙な汁がしみだしているのが気になるが、まあ食えないこともないだろう。…多分。
そして次に喰鮫…なんだが…この、魚の煮物の周りに飛び散っている赤い液体はなんなんだろうか。…血…?なんで血?
…まあ食べてみれば分かるだろう。
俺は腹をくくって、まず蝙蝠作の卵焼きに箸をつけた。
「……(ぱくっ)…」
「…どうだ?」
「………………ん゛…ん゛ん゛!!!??」
卵焼きを口に入れ、咀嚼した途端、口内に広がる謎の液体。
え、何これ、分泌物?卵焼きから?噛んだら発動するトラップか何か?つか生臭あああああああ!!
とそこまで考えながらも俺はげえむぎぐるあぁぁあと謎過ぎる奇声を上げながら全速力で厠に走り、そのブツを吐き出すことに成功した。
「…………ぐ…」(フラフラ
「おいおい川獺、大丈夫かよ!?え、そんなに不味かったか!?」
蝙蝠がなんだかあたふたしていたが、それどころじゃねぇよマジで。
「ひとつ聞かせろ…あの、わけのわからん汁は何だ…」
「え…汁…?…ああ、魚汁のことか」
さ…さかなじる…だと…?聞いたことねえよ…
「お前魚好きじゃんか。でも俺魚料理苦手だからよ、せめて味だけでもと思って魚を死ぬほど刻んで液状にしたんだぜ!」(ドヤア!
「ドヤ顔やめろ。あとその発想根本からおかしいからな、二度とするなよ」
大体何故卵焼きにんなもんを染み込ませるという発想に行き着いたのか全くわからん。
ふと喰鮫のほうを見ると、俺達のやりとりを見ながらぷすすっと笑いを漏らしていた。
「テメッ何笑ってやがる!つーかその顔すんげえイラッとするわ!」
「いえいえ、貴方があまりに常識はずれなことをするので思わず…ぷっ」
「お前に常識とか言われたくねえんだよおおお!」
喰鮫の襟首を掴んでぶんぶん振り回す蝙蝠と、余裕の表情で笑い続ける喰鮫。
これに乗じて逃げ出そう。
そう決意した俺の目論みが実行される前に、蝙蝠をかわした喰鮫が俺の正面に皿を置きやがった。ちくしょう。
「さあどうぞ、私の勝利は決まったようなものですがね」
余裕の笑みと共に差し出された一品。血塗られた煮魚。
…………………食わなくても……分かるから………うん……
「…………………」
「おや?どうしたのです川獺。早くお食べなさい」