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□僕のすべてを君のために
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それから、どれくらい歩いただろうか。ひとまず、今日を過ごすための場所を見つけた。
此処に来る間も血の混じった咳が止まらなかった。
この神社ではたくさんの子供が遊んでいる。
「お兄ちゃん、何してるの?」
こちらに歩いてきた女の子が僕に問いかける。
「…何、してるんだろうね」
自分でも何をしているのか分からなくなった。これから何をするのかもわからない。
ぼーっと外を眺めてるうちに、あたりはすっかり暗くなってしまっていた。体を休めようと神社の境内に入り、手近なところに横になった。病魔にむしばまれた体は、横になった途端にすうっと意識が遠のいた。
〈この先の宿場町に、新選組の土方がいるってのは確かか?〉
〈ああ。よし、行くぞ〉
寝ている間に気配は感じていた。会話に耳を立てると、先ほどまで会って話をしていた人物を殺しに行くところだった。
まだ許したわけじゃないけど、そこにはあの子がいる。僕が守れなかったあの子が。
浪人達の行く手に先回りし、街道に身を潜めた。
しばらく待っていると、急に肺に違和感を感じた。その直後、口の中に広がったのは、鉄の味。
「ゴホッ、ゲホッ」
それを吐き出すように咳込んだ。目を開けると、今までにない量の血が地面にしみを作っていた。
「そろそろ、限界かな…」