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□はじめての…
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*沖田目線*
千鶴ちゃんがこの屯所に来てから半年ほど経った。巡察にも参加して父親の行方を捜している。今日は僕の一番組の巡察に同行している。
町の中心部まで来ると、千鶴ちゃんは何やらある方向を見つめていた。目線の先には、小さな駄菓子屋さんがある。
「ねえ、何見てるの?」
「ふぇ!?あ、え、え〜と…な、何も見てないです!!」
おもしろいなあ、この子。
「嘘つき。駄菓子屋の金平糖見てたよね?」
クスクスと茶化すようにわざと聞いてみると、
「な、何も見てません!!」
って、真っ赤な顔して反論してくる。千鶴ちゃんはいつも、僕が茶化すとおもしろい反応をしてくれる。
「そ、それより巡察しましょう!!このままじゃ日が暮れちゃいます!!」
「うん。そうだね。」
軽い返事をしてまた歩き出す。すると君は、きれいに輝く金平糖を名残惜しそうに見つめていた。
千鶴ちゃんは、元はただの可哀そうな女の子なんだ。あの事件に巻き込まれたせいで、今ここで不自由な暮らしをしている。あんなことがなかったら、普通に金平糖も買えたはずだ。めいっぱいお化粧もして、普通に暮らしてたはずだった。
それでも、こちら側にも事情はある。どうしようもないことなのだ。