BOOKA

□構って欲しいんだよ!
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昼下がりの公園で、燦々と降り注ぐ陽の光をその身に浴びながら、さかさかとカードが擦れる音を聞く。
それは、テガマルが一心不乱にデッキをいじっているからなのだが、ハジメは暇で仕方がない。
先程まで一緒になってデッキの調整をしていたのだが、折角の休日、二人きりなのに黙々とデッキをいじるだけでは面白くない。
その事にふと気付いてテガマルに何度か話し掛けると、聞いてやるから喋れ、と言われて話していた。
しかし、その全てを相槌すら儘ならない状態で返された。
このデッキ調整が終わっても、テガマルとバトルをすることはできない。
それは、ハジメはテガマルとバトルをするための条件を満たせていないからだが、だからこそハジメにとってこの時間は暇だった。
仕方なく椅子に突っ伏しながら自分のカードとにらめっこするのだが、集中力がどこかに飛んでいってしまったらしく、全く身に入らない。

「なぁ、テガマルー」
「……何だ」

突っ伏したままテガマルを見るが、ハジメに視線を向けること無く返事をする。
その事に苛立ちを感じつつも、ハジメは何も言わずに視線を逸らせた。

「俺、ちょっと向こう行ってくるわ」
「あぁ」

向かいでは丁度、チヒロが子供たちにせがまれるままスピリットの絵を描いている。
同じ構ってくれないでも、自分も楽しめる方が良い。
手早く自分のカードをケースに閉まってチヒロの所へ行けば、ハジメの姿を認めたチヒロが目を丸くしたが、直ぐに納得したように笑う。

「何だ、テガマルに振られたのか」
「!……」

てっきり思いっきり否定をしてくるのだと思っていたチヒロは、顔を赤くして俯いたハジメに眉を寄せる。
そして、スケッチブックを閉じた。

「ごめんね、明日描いて持ってくるから、今日は我慢して貰ってもいいかな?」

笑顔ですまなさそうにそう言うチヒロに、子供たちは不満そうな顔を向ける。
しかし、チヒロが再び謝れば、絶対だからね!と指切りをして遊具で遊び始めた。
そんなチヒロの行動に驚きながらハジメが呆然とその様子を眺めていれば、チヒロはハジメに向き直る。
やけに真剣に見つめられて、ハジメはいたたまれなくなりながらもスケッチブックを指差した。

「良いの?あの子達……」
「良くないけど……テガマルと何かあった?」
「え?」

チヒロの問いの意味が解らず首を傾げれば、チヒロはため息をついた。

「自分の顔見てみなよ、酷いぞ」
「酷いって何だよー!」

ハジメは少し怒ったようにふざけてチヒロを睨むが、チヒロはどこ吹く風でハジメを見ている。
真剣な顔でじっと見られると、ハジメは薄く頬を染めて気まずそうに俯く。

「……その、テガマルの邪魔になるし……て、チヒロの邪魔にもなっちまったな!ごめんごめん」

無理に笑おうとして、うまく笑えていないハジメに眉を寄せ、チヒロはその頭に手を置いた。
ハジメが驚いて顔を上げれば、優しく微笑んだチヒロと目が会う。

「俺は邪魔だなんて思ってない。テガマルも……同じだと思う。ただ、テガマルはうまく言葉にできてないだけなんだよ」

そう言って視線を逸らせたチヒロの先に、テガマルが立っていた。
少し不機嫌そうにハジメを見ており、その後チヒロを睨む。
その視線に苦笑するチヒロは、軽くハジメの背中を押した。

「ほら、行ってこいよ」
「!」

小さく一歩を踏み出しただけで止まったハジメは、先ほどの会話を全部聞かれていたのかと気恥ずかしくてテガマルを見ることができない。
そんなハジメの気持ちを知ってか知らずか、テガマルは遠慮無くハジメの手を引いて歩き出した。
そして公園から少し離れて立ち止まり、少し背の高いハジメを見上げる。

「俺はお前を邪魔だと思ったことは無い……が、気分を害したのなら――」
「違う!お、俺は……」

定まらない視線を左右に揺らしてテガマルの手を握り返す。
その行動にテガマルは目を丸くするが、何も言わずに握り返すと安心したのか、ハジメが少しだけ力を抜いた。

「邪魔、したくないんだ。俺、結構わがままで……真剣にやってるのは好きなんだけど、その……」

続きがうまく言えないまま口ごもるハジメ。
そんなハジメに、テガマルはにやりと笑った。

「はっきり言え。でないとわからないぞ」
「っ、テガマルほんとは解ってるだろ!」

顔を真っ赤にして睨むハジメに笑い返し、握ったままの手を引いてハジメを引き寄せる。
そして、テガマルはその耳元に唇を寄せた。

「解らんな」
「〜〜っい、意地悪だな!」
「なんとでも?」

余裕そうなテガマルの態度に、寄りかかるようにその顔を肩口に埋め、ハジメは囁いた。




構って欲しいんだよ!
(なら、このまま家に来るか?思う存分可愛がってやるぞ)
(て、テガマルの変態!)
(……失礼だな)

*****
初のテガハジ。
仄かにハジメ←チヒロ

ハジメは両親が研究者だから、構って欲しくて話し掛けるけど忙しそうだから邪魔したら駄目だとどこかで思っていて無意識に遠慮する癖がついてたら美味しい

因みにチヒロくんはテガマルならばと思ってハジメを友人として見ようとしているが、隙があれば奪おうとも考えていれば……
 

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