短編

□ぷりぷりぷりんせす
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「こゆびーーーむ!!」

ああ、まただ。

桃のこゆびーむ。

確か相手がメロメロになるんだっけ?

「ちょっとぉ、キャプ?かまってよぉ」

「あのね、いくら待ち時間がいっぱいあったって本番直前はいつも緊張してるでしょ?あんたも少しは学んで立ち位置の復習したら?」

そう、今はコンサートの本番前の時間。

本番までかなり時間があるからメンバーは楽屋を出てぶらぶらしてる。

で、残ってるのは私と桃の二人。

「だってぇ…折角キャプと二人きりなのに…」

急にしゅんとなる桃にきゅんと高鳴る胸の鼓動。

七年も一緒にいるのにまだまだ慣れない。

というか桃は見てて飽きない。

ぶりっこでうるさくて馴れ馴れしい桃。

なのに、世界で一番愛しい人。

可愛くてたまらない、私の桃。

「…キャプ?」

桃の言葉にはっとして我を取り戻す。

「まあ、少しは遊んでもいいよ」

持っていた台本を机に置いて、桃に向かい合う。

「で、何するの」

「んふふ、あのね、」

またくだらないことするつもりだな、と思ったのもつかの間。

いきなり私の膝に跨がってきた。

「ちょ、桃っ…!」

「重い?」

「いや、重くはないけど、さ」

近い。ものすごく。

「一回はこの体制になってみたかったんだー」

人の気も知らないで平然と言う桃。

「ね、キャプ?良いことしよっか?」

そう呟く桃は、いつもと違って妖艶で、呑み込まれそうだ。

「い、良いことっ…?」

「ん。良いことだよ」

大体予想はつくけど、ここは楽屋で、メンバーがいつ帰ってくるかわからないのに。

「だ、ダメ…!」

「なんでぇ?」

甘ったるい声で聞いてくる。

ああ、お願いだからそんな声出さないで。

「…メンバーにバレる」

「…ああ、それなら大丈夫。さっきみやに言っといたから」

「え?ばらしたの!?」

「ちがうよぉ、そんなことしたらみやに嫉妬されちゃう」

「じゃあなんで…」

「キャプが精神統一してるから邪魔しないように本番20分前に帰ってきて、って言った」

「そ、そんな理由で通ったんだ…」

「うん。流石キャプテンって言ってた」

「そっか」

…って、この状況やばくない?

さっきまでごく普通に話してたけどよく考えたら桃は私の膝の上。

これからすることを想像しただけで顔が熱くなる。

「それ、ももを誘ってるよね」

桃は呟き、肩に手を置かれて顔が近づいてきた。

ぎゅっと目を閉じると、耳に暖かい感触。

「んっ…!」

ちゅっ、と短めのキスを耳たぶに落とされた。

「キャプって、ほんと耳弱いよねぇ」

唇を付けたまま囁かれ、別の場所が疼く。

「ねぇ、佐紀ちゃん。してもイイ?」

いきなり名前で呼んでくる桃に、目眩がした。

こうなったら、桃の勝ち。

私はもう逃げられない。

「桃…」



真正面から近づく桃の顔の行き先は、分かる。

目を閉じる桃に習い、私もそっと目を閉じた。


-完- 2011.06.04

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